6.リアル店舗を繁盛させる「新しい接客」
(1)リアル店舗では再び接客のニーズが高まっている
次に、今後のリアル店舗の役割について、「人の動き」という観点から考えてみたいと思います。
ネット店舗の普及によって、私達はいつでもどこでもモノが自由に買えるようになりました。ネット店舗はますます規模を拡大し、その結果、激しい価格競争時代に突入しています。
ネット店舗では、簡単に商品を検索し、価格を比較し、低価格で購入することができますが、そんな便利なネット店舗に対する目新しさは日に日に減少しています。
それはいったいなぜなのでしょうか?
最大の理由は、ネット店舗には店員の接客がないということです。ネット店舗には、直接、店員に質問や相談をする機会がありません。
そもそも「店」は、見知らぬ人間同士が余剰品を交換する「交換の現場」でした。そこでは、商品そのものよりもコミュニケーションが重要だったのです。
その後、店はそのシステムを利用して生活必需品を流通させる「商店街の店」となり、商品の意味が大きくなっていきました。
さらに、流通が中心となった「スーパー、コンビニ」に変化すると、セルフ販売方式が導入され、接客のウエイトは小さくなっていきました。
次第に、商品だけが流通し、店員の接客がないネット店舗が、流通の中で大きな役割を果たすようになりました。
しかし、人間はコミュニケーションがない「店」には満足できません。
どんなにネット店舗が増えて、宅配が便利になっても、客が「店」に行って見知らぬ人(店員)とコミュニケーションをしたいという欲求がなくなることはありません。
それでは、ネット店舗から失われたコミュニケーションはいったいどこに移行するのでしょうか?
そこで、今後の中心となるのは、ネット店舗とリアル店舗の融合です。
そこでは、より便利な流通はネット店舗を通して、生身の店員の接客はリアル店舗を通して提供することで、再び本来の「店」の機能を取り戻そうとしています。
このように、今後、客はリアル店舗に、店員の接客を求めてやって来るために、今後はよりいっそう質の高いコミュニケーションを背景にした「接客」が求められるのです。
(2)リアル店舗における客と店員のコミュニケーションを妨げるもの
客は、店員の息苦しい接客を受けなければ商品が買えなかった商店街時代から、接客を受けずに商品が買えるセルフ販売中心の時代になったため、それだけで満足し、しばらくの間は細かい接客の質は問いませんでした。
しかし、今後、多くの客が「接客そのもの」を求めて店に来るようになると、より客を満足させる質の高い接客が必要になってきます。
そこでクローズアップされてくるのは、客と店員の「個人差」の問題です。
かつて、様々な接客教育が行われましたが、どんなに接客教育を行っても、「接客の達人」を生み出すことはできませんでした。また、接客の先生が教える接客方法が、必ずしも客から喜ばれたわけでもありません。
その最大の理由は、接客を提供する側の店員に様々な個性があり、一方、接客を受ける側の客にも様々な個性があるために、なかなか両者がかみ合わないことです。
私たち人の動き研究室では、人間の個性を13種類の動きのタイプとして集約し、それぞれの人の考え方や行動の仕方をまとめています。
すなわち、13人の店員と13人の客がいることが、接客がうまくいかない最大の原因なのです。
店員は、まず、自分の動きのタイプを知って、日ごろ、どのような接客を行いがちかを知る必要があります。
さらに、お客様の動きを観察することによって、そのお客様が求める接客の仕方を理解し、対応することが重要になってきます。
販売現場は、お客様に感じの良いアクションを提供することが必要ですが、決して堅苦しい作法や道徳を提供する場ではありません。
リアル店舗は、様々な個性のお客様が、自分に合った接客を受けて喜んだり、また、合わない接客を受けてとまどったりすることも含めて、生き生きとしたコミュニケーションを楽しむ場所なのです。
このブログでは、店員が自分自身の接客タイプを知り、それぞれのお客様の接客に対するニーズを知るための情報をご提供しています。
1.見知らぬ客を対象に、接客をしなかった「戸板一枚の店」
2.第一世代の店「商店街と百貨店」の登場と衰退
3.「接客しない店」が主流になった第二世代の店~第三世代の店
4.店内にだけ「道」を作った第三世代の店の行きづまり
5.「移動空間」で繁盛している第四世代の店
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