53.(20)自動販売機がとりついた店(1988年当時のさびれゆく小売店)
こんにちは。
日本の商店街の店の栄枯盛衰を研究することは、
(1)売れる店と売れない店が生じる訳
(2)駅ナカ・駅ソトショップに大勢のお客様が引きつけられる訳
(3)駅ナカ・駅ソトショップの中にも売れる店と売れない店が生じる訳
などについて知ることにつながります。
実は、「商店街の店」とは、「店」本来の性質を埋め込んで、当時の諸事情を背景にして発案された、特別な役割を担った「新しい店」(当時としては)だったのです。
やがて役割を終えて静かに消え去っていった多くの「商店街の店」と入れ替わるかのように、次々と登場してきた新しい商業集積もまた盛衰を繰り返し、そしていよいよ、「店」本来の性質を蘇らせた新しい店が登場してきています。
さて今日は、20回シリーズでご説明してきました、かつての商店街の店の最終回です。
その店とは、「自動販売機にとりつかれた店」で、かつての全国各地の商店街(約30年前の1988年当時)には、必ず存在していた店なのです。
(以下の、イラスト&文は、「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋したものです。)
(1)自動販売機を置くことによって、店内にはいる客の数が減少する(1988年当時)
………下の二店は「店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店」の酒店と化粧品店なのですが、接触部分の商品空間はすべて自動販売機になっています。
「店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店」の本来の機能は、接触部分で多くの客をひきつけて、そのうちの何割かの客に店内を回遊させることなのです。
ところがこの場合、自動販売機を利用する客は目的がはっきりしているので店内にははいってきません。………
(2)店内の様子がよく見えないので、フリー客がはいりにくい(1988年当時)
………一方、本当にこの店に興味を持ちそうな客の目には店内の様子が見えないので、なかなか客数を増やすことができないのです。
こんな構造では店員の努力も意味がないので、店はますます無気力になり、自動販売機に頼り続けることになるのです。………
(以上の、イラスト&文は、「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋したものです。)
このブログでは、「日本の商店街はなぜ滅んだのか?」の第一要因として、「店に住み込んだ店主が、接客をする店であったから」だということを、何度もご説明してまいりました。
かつての馴染みのお客様は、濃密な人間関係を背景にした接客をする店を避けて、商店街から遠ざかって、希薄な人間関係しか存在しない店へと遠ざかってしまったのです。
何とかして遠ざかったお客様を呼び戻そうとして必死になって頑張った店主たちは、やがてそれが大変難しいことだと知ることになり、何とかして当座しのぎの利益を増やそうとする方策に舵を切っていったのです。
それが、衰退の影が忍び寄った商店街に、溢れるように出現してきた自動販売機です。
店主が休んでいる間も代わって、24時間販売してくれる自動販売機は、最初は利益を生み出しましたが、自動販売機を店頭に設置することによって、以前よりもいっそうお客様がはいりにくい店になってしまいました。
馴染みの店主が馴染みのお客様に接客をすることが特性であった商店街の店が、一転して、全く接客を伴わないで販売が完了してしまう自動販売機を設置することによって、商店街の店らしさは、どんどん損なわれていきました。
「商店街の店」が滅んでいった要因の一つとして、店主自身のやる気の欠如を指摘する、全く見当はずれな専門家の声もありますが、決して商店街の店主自身のやる気が欠如していた訳ではありません。
「商店街の店」が、商店街の店としての役割を終えただけのことなのです。
かつては、多くの日本人が、「商店街の灯り」に大きな「元気」を与えてもらいました。
しかし、その灯りは、「茶市の風」とは、元来性質の異なるものだったのです…。
やはり、商店街の栄枯盛衰の締めくくりとしては、前回にもご紹介しました。「本来の店」の性質を語った次の一文が最もふさわしいと考えます。
『茶市の風に吹かれると風邪をひかん』(長崎県・早岐・はいきの茶市)
※長崎県の早岐に「茶市・ちゃいち」という市が立ちます。茶市の風に吹かれると風邪をひかないといわれています。おそらく、その市には元気の源があったのでしょう…。
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