KITTE(キッテ)・東京駅新名所
東京駅の新しい商業施設「KITTE(キッテ)」は、東京駅丸の内南口を出て目の前の、旧東京中央郵便局跡に完成した「JPタワー」内に、3月21日オープンしました。
5階までの吹き抜けで、天井はガラス張りになっています。(東京中央郵便局は1階入り口そば)
地下1階は食品、1階~4階はファッション&雑貨、5階~6階はレストランフロアという構成です。
それでは、この「KITTE」を、「人の動き」という観点から「三空間店舗構造」と「店員と客のアクション」を観察してみましょう。
●KITTE(キッテ)の三空間店舗構造
1階~4階のファッション店と雑貨店の「三空間店舗構造」は、「店員空間がない、引き込み・回遊型店舗」が主体で、一部「店員空間がある、引き込み・回遊型店舗」で構成されています。
(店員空間がない、引き込み・回遊型店舗)
(店員空間がある、引き込み・回遊型店舗)
●サクラパワーが生じている店、生じていない店
「店員空間がない、引き込み・回遊型店」の場合は、店内に「サクラパワー」が生じたときは、店員のなわばりが解除され、通行客にとって非常に入りやすい店となります。しかし、他の客が一人もいない場合は、店員のなわばり主張が生じ、非常に入りにくい店となります。
(サクラパワーが生じている状況では、店員の存在が気にならない)
(サクラパワーが生じていない状況では、客は落ち着いて店内を回遊できない)
●吹き抜けを取り入れたビルに出店した店舗の特徴
1階から5階までが吹き抜けで、天井がガラス張りになっている、この個性的な建築物の特徴によって、客は来店すると同時に1階から5階までの各フロアーを一望することができ、非日常性の高い空間を体験することになります。
吹き抜けの構造をした建築物の場合は、各フロアの通路の片側にだけ店舗がレイアウトされるのが一般的です。
この「KITTE」の場合も、各フロアを回遊する客は、片方は店舗ですが、その反対側は吹き抜けの風景を眺めることになります。
このように、片側にしか店がない通路の場合は、両サイドに店舗が連なった一般的な通路に比べると、あまり多くの客を引きつけられません。それは、他の店で買い物をしたり冷やかしたりする客のアクションや、それに対応した店員のアクションが見えないため、にぎやかさと興奮度が大きく欠けるためだと考えられます。
(通路の片側にレイアウトされたテナントショップで買い物をしたりを回遊したりする客の姿)
●広すぎる通路に分断された地下1階の食品フロア
一般に、このような商業施設の一番の集客フロアは、食品フロアです。
しかし、「KITTE」の地下1階食品フロアは、非常に広い通路に分断されているため、構成している店舗数の割には、売り場としての迫力に欠けています。
客はわざわざ回遊して買い物をするわけではありません。
移動する通路のすぐそばにある店で買い物をするのです。
東京駅の中にある駅ナカショップや百貨店の食品コーナーは、客が移動する通路に沿って店をつくっていますが、「KITTE」はそのような構造になっていないため、残念ながら食品フロアとしての賑わいと魅力に欠けています。
(広い通路に分断され、左右の店の魅力が半減されています)
(なかなか回遊してこない客を呼び込む店員の努力にも限界があります)
(店頭で試食をすすめる店員に、客は気軽に近づくことができません)
●「KITTE」(キッテ)が、今後、客を引きつけるとき、客を遠ざけるとき
東京駅の丸の内南口を出て、すぐ目の前という最高の立地にあるために、東京駅の新しい観光スポットととして、大勢の旅行客を引きつけることが予測できます。
そのために、吹き抜けのある商業施設が持つハンデを、来店客の多さでカバーしてゆくことが考えられます。
しかし、吹き抜けを取り囲むようにレイアウトされた店舗の成功事例が無いだけに、店によっては今後、苦戦を強いられるような状況が起きることが予測できます。
また、地下1階の食品フロアは、広い通路で分断され、食品フロアとしてのまとまった魅力を欠いていますが、今後どのようなテコ入れがなされるのか注目してゆきたいと思います。
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