25.店員空間が狭い場合のアクション術(その1)(入りやすい店売れる店1986年版)
こんにちは。
デパ地下などの食品フロアの店の構造は、現在もそのほとんどが「店員空間の狭い接触型店」で、ごく限られた店だけが「店員空間の広い接触型店」であることを、前回までにご説明しました。
なぜ、この状況が変化して来なかったかは、店本来の性質に深い関係があります。
店本来の性質とは、店は店員の「なわばり」であるために、「戸板一枚の店」の「商品空間」を挟んで、店員と客とが「なわばり」の攻防を交わしつつ、売買が行われるということです。
したがって、店員が「なわばり」を主張するアクションを行えば客は遠ざかりますが、反対に「なわばり」を解除するアクションを行えば客を引きつけることができるのです。
一部の「達人店員」は、意識的に「なわばり」を解除するアクションを行って客を引きつけていますが、大部分の店員はその理解がないために、ついつい「なわばり」を主張するアクションを行っては客を遠ざけてしまいます。
しかし、「なわばり」を主張する店員の店にも、「なわばり」を解除する店員のアクションが生じたり、客が客を呼ぶ「サクラパワー」現象が起きたりなどして、必ず客を引きつける状況が生じます。
そしてまた客自身も、店員との「なわばり」の攻防が全く無い店ばかりの所で買い物がしたいとは望んでいません。
なぜならば、見知らぬ店員との「なわばり」の攻防を行いつつ、少しでも有利に商品を手に入れようとする行為こそが、買い物の醍醐味だからです。
以上のような理由で、ごく一部の店を除いた大部分のデパ地下の店は、「店員空間の狭い接触型店」のまま、現在に至っているのです。
どうぞ、実際にデパ地下の現場行って、「店員空間の広い接触型店」は、ごく限られた店だけであることを確認してください。
そして、もしも全ての店が、「店員空間の広い接触型店」の構造ばかりになった場合の、魅力の無いデパ地下の様子をも想像してみてください。
さて今回は、「店員空間が狭い場合のアクション術(その1)」というお話です。
なお、このシリーズは約35年前の書籍の抜粋であるということを改めて念頭に入れて頂いた上で、どうぞお読みください。
25.店員空間が狭い場合のアクション術(その1)
①店員がじっと立っている店は客を遠ざける
店員が立っているのが精一杯という店は数多くあります。
こういう店での店員の動きを調べてみると、商品や陳列ケースにはりつくようにしてじっと立っていることが多いのです。
この「じっと立っている」という店員のアクションは、客に「客が来るのを今か今かと待っている」というなわばり主張のメッセージを伝えてしまいます。
実際、店員が前方を向いてじっとしている状態の店には、あまり客が近づいてきません。
店員がこのようにじっとしているのは、必ずしもなまけているわけではなくて、次のような理由が考えられます。
①店の規模が小さいので作業がすぐ終わってしまう。
②「客待ち態勢」を教育されており、それを実行している。
①のほうは、作業がないのでじっとしている→客が来ない→接客作業がない→客が来ないという悪循環をつくりだします。
また②のほうは、客が来ない状況をわざわざ自分からつくっているようなものです。
もちろん、店頭に店員がじっとしているからといって、全く客が来ないわけではありません。
通行量がふえる時間帯にはよく売れる状況になることもあります。
このことが、長い間、店員のアクションのまちがいを見のがす結果になったのです。
より売り伸ばそうと思うなら、じっと立っていることはやめなければなりません。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
続きは次回に…。
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