78の(6).ひやかし安全信号を売る店に人が群がる(ファンシーショップ・ハッピードア)※1986年当時
こんにちは。
百貨店の中で、一番多くの客を引きつけているフロアーは、「デパ地下」と言われて人気の地下の食品フロアーです。
それでは、地下の食品フロアーと他のフロアーには、どんな違いがあるのでしょうか?
それは、食品フロアのほとんどの店が「店員空間の狭い接触型店」で構成されていて、それぞれの店の①「商品空間」と②「店員空間」と③「客空間」の三空間の「なわばり」が、他のフロアの店に比べて、はるかに解除された三空間となっている所に最大の違いがあるのです。
①「商品空間」の「なわばり」解除とは?
食品フロアのほとんどの店の「商品空間」は、大体よく似た構造とサイズ(六尺=1.8m)の陳列ショーケースとなっていて、客の回遊通路に面しています。
そして、どの店の「商品空間」にも、客ができるだけ気軽に眺めたり検討したりできるように、商品を演出したり案内したりする様々なツールが用意され、それらが「ひやかし安全信号」となって「なわばり」を解除しています。
したがって、ただ回遊するだけの客にとっても、大変冷やかしやすい「商品空間」となっています。
②「店員空間」の「なわばり」解除とは?
「商品空間」を挟んだ「店員空間」であっても、店員がじっと立っていたり、早すぎる「いらっしゃいませ!」の掛け声をかけたりした場合には、「なわばり」を主張してしまいますが、接客中や作業中のアクションを行っている間は、やはり非常に「なわばり」が解除された「店員空間」となります。
③「客空間」の「なわばり」解除とは?
食品フロア―全体の店をくまなく見て歩けるようにつくられた回遊通路(客空間)は、大勢の見知らぬ客が行き交う通路となっているために、回遊通路(客空間)全体が常に「なわばり」が解除された状態となっています。
そして、一人以上の客が立ち止まった店の前には、「サクラパワー」が生じるために、最も強力に「なわばり」が解除された「客空間」となります。
以上のように、「デパ地下」は全てのフロアーの中で一番「なわばり」が解除されているために、買う買わないに関係なく、最も気軽に冷やかしながら回遊できるフロアーであることが最も人気のある要因なのです。
さて、以上のことを考慮しつつ、「78の(6).ひやかし安全信号を売る店に人が群がる(ファンシーショップ・ハッピードア)※1986年当時」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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78の(6).ひやかし安全信号を売る店に人が群がる(ファンシーショップ・ハッピードア)※1986年当時
◆類似商品を販売する店でも客がこないのはなぜか?
この店のような商品を扱う店はほかにもたくさんあります。
そうした店はたいていセルフサービス方式をとるので、売り方もだいたい似ています。
にもかかわらず、あまり売れない店かあるのは、いったいどうしたわけでしょうか。
売れる店と売れない店の三空間設計にははっきりとした違いがあります。
売れる店については実例をご紹介しましたので、売れない店について、その共通した特徴をあげてみたいと思います。
まず、店が狭すぎる場合は、あまり客がはいりません。
せっかく接触・引き込み・回遊型の店をつくっても、店が狭いとその中にはいっている店員のなわばりが商品空間と客空間を侵してしまうので、客は安心して商品を見ることができないからです。
また、客が中にはいっても、店内の商品量が少ないので、すぐに見終わって出ていってしまいます。
そのためなかなか店内に客を集められません。
また、客空間がレジから丸見えになっていたり、店内の見通しがあまりにもよすぎると、店員の日をのがれられないので、客が落ち着かなくなります。
広い店でも、商品量が少ない場合はあまり客を集められません。
商品の内容をしぼり込めばしぼり込むほど客層が限定されたイメージになって、一般客がはいってこなくなります。
また、店内の客もすぐに商品を見終わるので、長く客をひきとめておけません。
商品そのものが単調でひやかし安全信号に欠ける場合も、やはり店内に客を集めることができません。
こうした店では、商品の内容がきわめて重要な役割を果たすのです。
店内の様子がよく見えない店にもあまり客がはいりません。
先客がいるかどうかがわからないので客が不安になるからです。
これらの条件が満たされたとしても、最後に最も大切な要因が残ります。
それは店員のアクションです。
どんなにいい三空間設計をした店をつくっても、そこにいる店員が客の行動をじっと見つめていたり、積極的に接客アプローチをしたりすると、客は簡単に逃げてしまいます。
このタイプの店では特に客に自由を与えることが大切なのです。
次回、「79.若者はなわばり解除した空間に集まる(原宿・竹下通り)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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