76の(2).商品整理に徹する店員が客空間を開放する(ファッション店・リモーネ)※1986年当時
こんにちは。
人件費の削減と人手不足問題を背景にして、スーパーやコンビニの無人化店舗への模索に拍車がかかっています。
ICタグの低単価が実現されるなどして、やがて無人のスーパーやコンビニが普及していくと同時に、様々な業種の無人化店舗が次々と登場して来ることが想像できます。
しかし、たとえ無人化店舗が日本各地で一般化したとしても、やがては無人化店舗+有人店舗の「折衷型店舗」へと変化していくに違いありません。
「店」で、お金やカードで支払いをしなくなったとしても、無人化店舗は間違いなく新たな有人店舗となっていくのです。
なぜならば、店はかつてそのような歴史をたどって来たからです。
対面あるいは側面販売の店の競争時代を背景として、
①対面あるいは側面販売の店舗よりも、②セルフサービスの店舗の方がより多くの客を引きつけ凌駕してきました。
しかし、セルフサービスの店の競争時代を迎えると、
②セルフサービスの店舗よりも、③セルフサービス+有人店舗の折衷型店舗の方がより多くの客を引きつけ凌駕しつつあります。
そして、やがて折衷型店舗の競争時代を迎えると、
③折衷型店舗よりも、④無人化(ロボット化)店舗の方がより多くの客を引きつけるであろうと予想されています。
しかし、さらにその次に、無人化店舗の競争時代を迎えると、
④無人化店舗よりも、⑤無人化店舗+有人店舗の「折衷型店舗」の方が、より多くの客を引きつけるに違いありません。
店舗競争という圧力によって、店員の数を減らしてセルフサービス方式の店にしたり、店員をゼロにして無人化の店にしたりするたびに、店は商品の包装や価格のつけ方や買い方などに工夫を凝らすことによって、客にとってより入りやすくより選びやすくより買いやすい店へと変化していきます。
そのため、ある時期、より多くの客を引きつけることができるのです。
しかし、客にとって本当に入りやすく選びやすく買いやすい店とは、見知らぬ大勢の客が行き交う移動空間にある店で、しかも身の丈サイズの商品空間を挟んで、見知らぬ店員が見知らぬ客として迎え入れてくれる店なのです。
だからこそ、再び有人店舗に帰っていくのです。
店は競争の圧力によって様々に姿を変えながらも、見知らぬ人同士のコミュニケーションが完全になくなることはありません。
すなわち、「戸板一枚の店」で交わされるコミュニケーションこそが店の醍醐味なのです。
さて、僅か30年前のファッション店には、セルフサービス方式を採用した店は全くありませんでした。
そんな中で、群を抜いて売れた店は、まれに存在する「達人販売員」のいる店と、その後登場して来たセルフサービス方式のファッション店にできるだけ近づけた売り方をしている店だけでした。
以上のことを考慮しつつ、「76の(2).商品整理に徹する店員が客空間を開放する(ファッション店・リモーネ)※1986年当時」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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76の(2).商品整理に徹する店員が客空間を開放する(ファッション店・リモーネ)※1986年当時
◆いつまででもひやかせる安全な商品空間と客空間
この店の中には、一部にまわりを壁で囲った独立したコーナーがありますが、それ以外の部分では商品の種類と量の豊富さを強く訴求した陳列方法になっています。
この豊富な商品量は客に対するひやかし安全信号として働いています。
また、この店独特のいり組んだ商品空間のレイアウトも、客を店内にひきとめるのに役立っています。
商品陳列棚の間の狭い客空間は、店員からの死角になるため、客は自由に商品を見ることができます。
そこで、たとえ店内にいる客の数が少なくても、客はあまり気を散らさず、商品に注意を集中することができるのです。
この、なわばりが解除された広い店の中にある程度の客がはいると、店への出はいりはまったく自由になります。
さんざんひやかしたあとで、何も買わずに店を出てもだいじょうぶだというオープンなイメージが、強力に他の客をひきつけるのです。
次回、「76の(3).商品整理に徹する店員が客空間を開放する(ファッション店・リモーネ)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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