62の(5).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)※1986年当時
こんにちは。
店の前を行き交う通行客は、次の三つのタイプに分けられることを前々回にお話しました。
①買う気がない客
②迷っている客
③買う気がある客
大勢の通行客があるとした場合、圧倒的に多いのは①買う気がない客です。
どこの店にするか、どの商品にするか、今日買うか買わないかを②迷っている客は、次に多い客です。
目的の店で目的の商品を③買う気がある客はごくわずかです。
ところが、圧倒的に多い①買う気がない客の中には、「なわばり」が解除された店に対しては、引きつけられる客が大勢含まれています。
また、次に多い②迷っている客のほとんどは、「なわばり」が解除された店に対しては、いっそう引きつけられます。
したがって、駅ナカ・駅ソトショップ、あるいはそれに準ずるような立地にある店の場合は、「なわばり」を解除することによって、①買う気がない客と②迷っている客をたくさん引きつけることができるのです。
「達人店員」と呼ばれる人の接客ノウハウは、①買う気がない客と②迷っている客を、できるだけたくさん引きつけることです。
もちろん、買う気のない客を引きつけて、積極的に接客して買う気にさせるのではありません。
買う気のない客をたくさん引きつけることによって、大勢の客が「サクラパワー」を発揮して、店の「なわばり」を解除してくれることを期待しているのです。
サクラパワーによって「なわばり」が解除された店は、強力なマグネットのように、通行客を次々と引きつけます。
店が店員の「なわばり」であるという観点に立てば、「売れる店」と「売れない店」の要因を新たに見つけ出すことができます。
以上のことを考慮しつつ、「62の(5).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)※1986年当時」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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62の(5).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)
◆この店の販売パワーが強いとき、 弱いとき
店の規模が小さい接触型店には宿命的な弱点があります。
それは、よほどの人気商品を販売している店か、一日中稼働する実演販売の店か、あるいはきわめて身体信号の正しい店員が販売をしている店でない限り、必ず店員のなわばり主張が商品空間をおかしてしまうということです。
この店は、三つの店のいずれの条件にもあてはまらないのですが、商品空間そのものの強力ななわばり解除によって客をひきつけ、全体としては近づきやすい店になっています。
そこで、特別な店員行動のプログラムのないこの店の店員も、接客に追われて次々とアクションを続けることができます。
けれども夏の間や贈答シーズンにはこの店に来る客が少なくなるので、店は動きを停止し、その結果、客を追い払うという悪循環に陥りやすくなります。
こういう店が一年を通して売り上げを伸ばしていくためには、代表商品に次いで季節に応じて売れる商品の開発をしておくことがどうしても必要です。
この店に限らず、店舗の面積の狭い店が売り上げを伸ばすためにしなければならないことは、商品空間のなわばり解除です。
この店も、売れる要因が商品空間のなわばり解除やひやかし安全信号の創造にあるのだということを見失ったとき、売れるしかけをこわしてしまうことになるでしょう。
商品空間が狭いことは、商売をするうえでは大きなハンディになります。その不利な条件の中でいかに客をひきつける店づくりをするかが、残された道なのです。
次回、「63の(1).広い商品空間で売る接触型店の贈答品店(洋菓子・ヨックモック)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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