60の(3).職人のアクションが客を引きつける(今川焼・御座候)※1986年当時
こんにちは。
1986年の百貨店の食品フロアで、当時開店から閉店まで長い行列で賑わっていた、今川焼の店「御座候・ござそうろう」を、「なわばり」を解除する店員と客のアクションという観点から観察分析しましたものを、今回を含む3回シリーズでご紹介しました。
開店から閉店まで、商品を作り続ける店員のアクションと、その様子を眺めながら順番を待つ客の長い行列が「サクラパワー」となって、「店員空間」と「商品空間」と「客空間」の「なわばり」が解除されることによって、更に次々と回遊客を引きつけていくことによって、繁盛店となっていたのです。
稼働し続ける実演室(厨房)の店員のアクションと行列が、繁盛店の決め手だったのです。
それでは、前回にの続き「60の(3).職人のアクションが客を引きつける(今川焼・御座候)※1986年当時」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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60の(3).職人のアクションが客を引きつける(今川焼・御座候)
◆行列が行列を呼ぶ客空間
百貨店の食品売り場の店は、大部分が接触型店です。
接触型店の客空間は通路上にできるため、売り場がこみあう時間帯になると、通路は客で大変混雑してきます。
これは、立ち止まって商品を買おうとする客と、通行客がぶつかりあってしまうためです。
反対に通行客が少ない時間帯には、客は商品空間をはさんで店員とすぐ近くで接しなければなりません。
こうした場合、一般に店員はすぐに客に声をかけてくるので、この場合の客空間は客にとっては決して安全なものではありません。
ところがこの店の客空間は、職人が商品を作っている商品空間のまわりにあるので、店員からのアプローチをうけることなく、いつまでもながめていることができます。
実演場と客空間はガラスでさえぎられており、このことがますます客の安心感を高めています。
このようになわばり解除の条件を多くそろえたこの店には、常に長い行列ができています。
この店の職人が忙しく動く様子と行列が店をぐるりととり囲む様子は、遠くの客にもよく見え、何かおもしろいものがあるという情報を伝えます。
人が人を呼ぶサクラパワーが働いて、店はますます客をひきつけます。
そこで販売されている商品そのものは特別にめずらしいものというわけではないのですが、人はこぞってこの状況で物を買いたがるのです。
その結果、この店の商品に対する評価が非常に高くなっていきます。
◆なわばりのない店員空間
この店は商品空間のパワーがあまりにも強いため、店員のなわばり主張が起きる状況がありません。
実際、この店の店員は、並んでいる客に対して、次々と接客作業を行っていくだけです。
一方、客は店員からまったく開放された客空間で、実演作業をながめながら自分の番が来るのをおとなしく待っています。
店員がフル稼働していることを知っているので文句をいわないのです。
◆この店のパワーが伸びるとき、落ちるとき
横浜駅東口にある世界最大級といわれる百貨店、横浜そごうの食品売り場にも、実は同じ店が出店していますが、今回紹介した店のほうがはるかに売れています。
この違いはなぜ生じるのでしょうか。
もちろん通行量を考慮にいれなければなりませんが、店の構造そのものにも差があります。
そごう店のほうは、職人が二人で、商品空間も狭いのであまり魅力がありません。
そのため客の行列ができず、サクラパワーが生じてこないのです。
このように、ごく近い地域にあって同じ商品を売っている二軒の店の、一方は非常に人気があり他方はあまり人気がないという事実は、私たちに多くのヒントを与えてくれるのです。
次回、「61の(1)豊富な商品が冷やかし安全信号)(菓子・太子堂)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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60の(1).職人のアクションが客を引きつける(今川焼・御座候)※1886年当時)
60の(2).職人のアクションが客を引きつける(今川焼・御座候)※1986年当時
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