62の(1).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)※1986年当時
こんにちは。
百貨店の中で、食品フロア(デパ地下)が大勢の客を引きつけ続ける理由は、いったい何なのでしょうか?
毎日利用する様々な人気の食品を販売しているからではありません。
店員と客が、「戸板一枚」(ショーケース)を挟んだだけの構造の店(店員空間の狭い接触型店)で構成されたフロアだからなのです。
店員が立っているだけでやっとの狭い①「店員空間」と、幅1.8m(六尺)が単位の②「商品空間」と、その都度さほど広くはない通路に生まれる③「客空間」の三つの構造無くしてデパ地下は、決して大勢の客を引きつけることはできないのです。
「店員空間の狭い接触型店」で構成された食品フロアは、今でも縁日や祭りの時だけに姿を現す露店商の店に最も近い販売現場なのです。
フロア全体の内装やインテリアを必要以上に小綺麗にしたり、ショーケースを統一化したり、店名の看板を画一化したり、特別な店だけに破格のスペースを提供したりしているデパ地下の担当者は、これまでのデパ地下がなぜ客を引きつけてきたかを、未だに気付いてはいない人なのです。
そして、「店員空間の狭い接触型店」は、その構造の魅力に合わせて、店員と客のアクションもまた魅力となっています。
具体的には、①じっと立つ客待ち姿勢や②早すぎる「いらっしゃいませ!」の店員のアクションは「なわばり」を主張して客を遠ざけます。
反対に、①接客中や②作業中の店員のアクションと、店頭に立つ客の姿が生み出す「サクラパワー」は、「なわばり」を解除して客を引きつけます。
以上のような客を引きつけたり遠ざけたりする店員と客のアクションと「戸板一枚の店」の店舗構造の魅力が、百貨店の中の食品フロアが、最も大勢の客を引きつけている要因なのです。
以上のことを考慮しつつ、「62の(1).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)※1986年当時」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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62の(1).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)
この店は、東京・渋谷の東横のれん街にある和菓子店です。
最近、百貨店や駅ビル等の食品売り場にある和洋菓子店の構造が少しずつ変化しています。
従来の接触型店ばかりだった売り場に、次第に引き込み型店が見られるようになってきました。
けれども、やはり多くを占めるのは、六尺(約一・八メートル)ケースを一~三本並べた程度の小型の接触型店です。
そこでここでは、店の大きさや構造は従来のままで、売り上げを伸ばす工夫をしている店を観察してみましょう。
この店の平面図を見ると、ケースがL字型にまがってはいるものの、ごく小さい平凡な接触型店であることがわかります。
しいて特徴をあげれば、この規模の店にしてはケースの奥行きが広くとってあることでしょう。
このため、商品空間は他店よりもやや広く、そのぶん店員空間は狭くなっています。
この店員空間には店員が二人はいるのがやっとで、そのことからも店の規模が理解していただけると思います。
商品空間が広いといっても、他店の二倍もあるわけではなく、奥行きでほんの十~二十センチ程度の差ですから、平面図的にはなんの変哲もない店といってよいでしょう。
この店は接触型店なので、客空間は店外の通路上にできます。
この店は二つの通路の交差点の一角にある角店ですが、両方の通路とも幅が狭く、ゆったりした客空間がとれるほどのスペースはありません。
平面図から見る限りでは、この店は他店と比べて決定的に有利な条件を持っているわけではありません。
だとしたらいったい何がこの店に客をひきつける要素なのでしょうか。
この店の三空間をさらに詳しく見ていくことにしましょう。
次回、「62の(2).小さな店でひやかしやすい商品空間を創造する(和菓子・追分だんご本舗)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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