61の(1).豊富な商品が冷やかし安全信号(菓子・太子堂)※1986年当時
こんにちは。
「買い物はネットショップで」と言うのが常識となりつつ現在です。
リアルショップはスーパーとコンビニとドラッグストアと100均ショップなどがメインで、いずれもセルフサービス方式の店となっています。
かつては、店員とのコミュニケーションが客にとっては大きな楽しみの一つでしたが、どんどん店員と客の人間関係はリアルショップから消え去っています。
そのために、感じが悪い店員の接客を我慢しながら買い物をする機会はなくなりましたが、感じが良い店員の接客に接して、癒されたり元気にされたりする機会も失っています。
今後、ネットショップはより普及し続け、リアルショップはますます店員と客の人間関係が生じない店舗システムの開発を急いでいます。
このように、リアルショップでの人間関係を失うことによってようやく、見知らぬ店員とのコミュニケーションの重要性が再認識されています。
リアルショップから、「お辞儀アクション」と「うなずきアクション」と「案内アクション」(接客三大アクション)が提供されなくなってしまったら、いったい私たちは、どこで、見知らぬ人とのコミュニケーションの仕方を学べばよいのでしょうか?
誰でもが、見知らぬ人(店員)と気軽にコミュニケーションを体験できる現場こそが、リアルショップだからです。
今後も引き続き、コミュニケーションにおける「人の動き」の役割について、店員と客とのコミュニケーション現場を通して、ご紹介してまいります。
それでは、前回にの続き「61の(1)豊富な商品が冷やかし安全信号(菓子・太子堂)※1986年当時」」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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61の(1).豊富な商品が冷やかし安全信号(菓子・太子堂)※1986年当時
この店は、東京・新宿駅ビルのマイシティの地下二階食品売り場にあります。
私たちは、百貨店や駅ビルの食品売り場には、実に様々な食品を販売する店が数多く集まっていることを知っています。
そしてそこに行けばいつでも、店員たちのにぎやかなかけ声や生き生きとした動きに触れられることを知っています。
こうしたにぎわいは、食品売り場をひやかして歩く客にとっては大きな楽しみです。
このにぎやかな食品売り場の店を観察してみると、一店一店の面積は非常に小さいことがわかります。
百貨店の限られたスペースの中に数多くの店をいれようとすると、どうしても一店当たりの面積は少なくなってしまいます。
この店は、このように競争の激しい食品売り場の中では、かなり広いスペースを持っています。
といっても、店の総面積からいえば、平面図にもあるとおりさほど大きくはないのですが、独特の店の構造が客に広さを感じさせてしまうのです。
この店は、一部に接触・引き込み・回遊型のレイアウトをとりいれていますが、基本的には接触型の店です。
つまり、客の通路に面して商品を並べ、できるだけ多くの客に商品に接触してもらおうとするタイプの店です。
接触型店はその特徴として、店内には客空間を持っていません。
この店の場合も一部を除いて、客空間は商品空間の外側にできます。
平面図のように、この店の商品空間は店員空間をぐるりととり囲むような形に配置されています。
そこで客はこの商品をながめるためには店の周囲をぐるぐるとまわらなければなりません。
このときにできる客空間を含めて考えると、この店の規模は非常に大きなものになります。
また、客が感じる店の大きさも他店に比べるとはるかに広いものになります。
さらにこの店の一部が、接触・引き込み・回避型になっていることも商品空間を広くするのに役立っています。
この店の接触型の部分では、様々な種類の菓子を山積みにしてハカリ売りをしています。
この売り方は、持ち帰り品である商品の特性とうまくマッチしています。
また、接触・引き込み・回遊型の部分では、パックにはいった菓子類を客が自由に手にとって選べるようになっており、この部分でも商品の特性と店のタイプが一致しています。
この店の店員空間はちょうど店の真ん中にあるため、他店の壁を背にした店員空間や二店が背中あわせになった場合に比べると、はるかに広いスペースになっています。
店員はこの中におよそ五~六人いて、周囲の客の注文にあわせて移動し、接客をします。
この店には、店舗イメージをつ〈るための特別な店構えやディスプレー物がありません。
あるのは商品を乗せる台と看板ぐらいです。
このきわめて簡単な店づくりそのものが、反対に、食品売り場の催事場の雰囲気を強く打ち出す結果になっています。
特別に目新しい商品があるわけでもなく、古い催事型の売り方をしているこの店を、客はどのように感じているのでしょうか。
次回、「61の(2)豊富な商品が冷やかし安全信号)(菓子・太子堂)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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