55.希薄な人間関係を背景にした本来の「店」には、店員(売り手)と客(買い手)がお互いに癒し合えるコミュニケーションが存在する
こんにちは。
1970年代に日本の各地に普及してきたスーパーマーケットは、「自由に好きなだけ自分で選んで買える店」であることが主な好評の理由でした。
1980年代に日本の各地に普及してきたコンビニエンスストアは、「黙って商品とお金を支払うだけで買える店」であることが主な好評の理由でした。
すなわち、いずれの店も、「店員と口を利かなくても買える店」だったのです。
この二つの店を、当時の老若男女の客がすぐに受け入れた背景には、かつて、日本経済の著しい発展と共に隆盛を極めた商店街の店で行われていた「常連接客」(客から注文を受ける前から接客を開始する方法)に対して、多くの客が大きな負担に感じていたことが考えられます。
このように、「店」には希薄な人間関係が求められるようになり、濃密な人間関係は敬遠されたのです。
前回お話ししましたように、さらにそこから四半世紀以上の年月が経過し、、リアルショップはいまや希薄な人間関係すら存在しない「ネットショップ」と「無人のリアルショップ」に向かって変化の足音を速めています。
しかし、希薄な人間関係を背景にした「リアルショップ」ならではの店員と客との人間関係が、お互いを「癒したり」、「元気づけたり」、「励ましたり」、「慰めたり」することの重要性を多くの客は大切に感じています。
近い将来には、ロボット化や無人化が予測されるセルフサービス方式のカフェやファーストフード等の店ですが、現在、そうした店で店員との間に交わされるほんのわずかなコミュニケーションに、得も言われぬ心地良さを感じている客もきっと多いはずです。
各地で開催されている大小様々なフリーマーケットでの店(ブース)においても、「戸板一枚の店」の「店員」と「客」の人間関係を垣間見ることができます。
多くの店がネットショップへの移行や無人化に向かう一方で、新しく生まれてくる「戸板一枚の店」からは、従来の接客の煩わしさは消え去って、軽快な人間関係が行き交い、多くの人を元気づける現場となることが予想されます。
以上のことを考慮しつつ、今回の「55.店員空間のある、接触・引き込み・回遊型店のアクション術②客空間にはいったら客に声をかけない」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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55.店員空間のある、接触・引き込み・回遊型店のアクション術
②客空間にはいったら客に声をかけない
このタイプの店で店員が客空間にはいるとしたら、それは商品を補充したり整理したりするときです。
客に呼ばれない限り、接客のために客空間に出ていく必要はありません。
客空間に出たら、店員はつねに作業中のアクションを続けていなければなりません。
ただし、この時のアクションはゆっくりとていねいにしたほうがいいでしょう。
というのは、この作業は客のすぐ目の前ですることになるので、乱暴にするとその様子が気になってしまうからです。
さらに、あんまり一心不乱に作業に熱中していると、それは客に「じゃまだからあっちへ行って下ださい」とか「私は今あなたにじゃまされたくありません」というメッセージを伝えてしまうことになります。
店はもともと店員のなわばりですから、店の中にはいっている客の立場はたいへん弱いのです。
そこで店員が少しでも強そうなアクションをすると、客はたちまち逃げてしまいます。
店員はできるだけ客の見たがっている商品のじゃまをしないように移動しながら、さりげなく作業をすることが大切なのです。
このタイプの店はふつう店員がカウンター内にいるため客空間をじゃましないので、比較的客がはいりやすい構造です。
それでも店内に客がひとりもいないときは、なかなか客がつきにくくなります。
そういう時は店員が客空間に出て作業中のアクションをしてみせることによって、店内に動きを演出するとよいでしょう。
次回、「56.店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店のアクション術①入り口をふさいでいては客がはりにくい」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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