59.いつも前向きで熱心に対応する店員と、消極的でやる気を感じさせない店員は、個人が持つ「動きの癖」から生じています。
こんにちは。
客が質問や相談をするために店員に声をかけたとします。
すぐに近づいて来て親しそうに挨拶をして、どんな質問や相談にも快く対応してくれる店員がいます。
反対に、なんだかやる気がなさそうにやって来て、必要最低限のことだけしゃべって、次第に遠ざかってしまう店員がいます。
前者の前向きな店員は、実は「接近の動き」を癖に持つ店員で、常に身体を前傾して、前にゆっくり動くのが得意な店員です。
後者の見るからにやる気がなさそうな店員は、実は「退避の動き」を癖に持つ店員で、前に動くのは苦手で、後ろにゆっくり下がる動きが得意な店員です。
そして、前向きな店員は何事も積極的に取り組まなくてはいけないと感じており、やる気が無さそうな店員は物事はできるだけ慎重に取り組むことが大切だと感じています。
したがって、客から声がかかった場合はできるだけ速やかに客に近づいて、客のどんな質問や相談にも快く対応するように厳しく指導をしたとしても、後者の「退避の動き」を癖に持つ店員の場合は、なかなか前向きな対応を行うことができません。
「店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店」や「店員空間のない、引き込み・回遊型店」において、前向きで熱心な店員が存在する一方で、やる気がなさそうに見える店員もまた存在している背景には、以上のような個々の店員が持つ「動きの癖」が深く関係しているのです。
ほとんどの人が、自分自身の一挙一動が、自分の「動きの癖」に強く支配されていることに気づいてはおりません。
当然、他人の行動もまた、その人の「動きの癖」に強い影響を受けていることにも気づくことができません。
さらに困ったことは、自分自身の行動に強い影響を与える「動きの癖」の存在に気づいたとしても、それを変えることは、まず不可能だということなのです…。
以上のことを考慮しつつ、今回の「59.店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店のアクション術④商品の豊富さが、ひやかし安全信号として働く」をお読みください。
(なお、本文は1986年初版の拙著「入りやすい店売れる店」の原文のままです)
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59.店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店のアクション術
④商品の豊富さが、ひやかし安全信号として働く
接触・引き込み・回遊型店の魅力はなんといってもその商品量の豊富さにあります。
思わず目移りしてしまうような数々の商品。
あれこれ見ているだけでかなりの時間楽しむことのできる品揃えは、それだけで多くの客をひきつけます。
このように商品量が多い店では商品を選択するのに時間がかかるという暗黙の了解があります。
客も時間をかけてさがそうという気があるので、店員がすぐに声をかけてこないことに腹をたてたりはしません。
客は店の中にはいっただけで、店自体が発している「商品がたくさんあるのでゆっくりごらんください」というメッセージをうけとります。
この店では、商品以外のひやかし安全信号をわざわざ用意しなくても、商品そのものの膨大な量が、ひやかし安全信号として働いているのです。
こうした店の店員が、客が店にはいるやいなや声をかけてきたり、まだろくに商品を見てもいないよぅな客に商品を強く勧めたりするのはまったくトンチンカンな対応です。
時間をかけて商品を見てもらうことこそが売り上げにつながるのです。
たとえ客が商品を買わずに店を出ていったとしても、その客が店内にいるというだけで次の客をひきつける要素になっているのです。
このタイプの店にはひやかし客がつきものですが、はじめから買うつもりのある客しか店内にはいってこないとしたら、店はほんとうに閑散としてしまいます。
ひやかし客を多くひきつけることが買う客をふやすのです。
次回、「60.職人のアクションが客を引きつける(今川焼・御座候)※1986年当時」に続く。
(※以上の文章とイラストは、拙著「入りやすい店売れる店」日本経済新聞社・1986年版より抜粋したものです)
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