13.近づきにくい百貨店の紳士服売り場(1988年当時)
約30年前の百貨店の化粧品売り場に引き続いて、紳士服売り場の接客方法と店舗構造についてご紹介します。
百貨店の紳士服売り場がお客様にとって、過去も現在も「怖い」と感じるのは何故かについて知って頂くために…。
イラスト&文は、「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋したものです。
(1)百貨店の紳士服コーナーが怖がられた理由
………百貨店の売り場の中で、女性客が怖がるのが化粧品売り場ですが、男性客にとって恐ろしいのはなんといっても紳士服売り場です。
スーツ、ジャケット、コートなど、比較的値段の高い商品が集められたこの一角は、特に店員がしっかりと見張りをしているので、とても客が自由にひやかせる雰囲気ではありません。………
(2)古典的な店員教育とタクシー待ちシステム
………きちんとした客待ち姿勢や早い接客アプローチはこの売り場の典型的なスタイルです。
客が来るのを正しい姿勢で待っていることが、価格の高い商品を売る時のサービスでもあるかのように、その傾向は今でも(1988年当時)まだまだ根強く残っています。………
………ちょうどタクシーが並んで客を待つように、店員も並んで客を待ち客が来ると順番にアプローチをかけます。
自分の番の時に来た客が買いそうもない人の場合はパスしてもいいのですが、いったん声をかけて失敗するとその店員は最後尾に並び直さなくてはなりません。
一度失敗するとその日一日チャンスがこないことさえあるので店員は必死になって客を追いかけます。
このことが、客にとって、怖い売り場になってしまう一つの原因なのです。………
(3)難しい現在(1988年当時)の紳士服売り場
………客数が増えて店員の対応が行き届かなくなってはじめて、客は今まではいれなかった店に中にはいっていくことができるのです。………
………紳士服売り場には「店員空間」がないので、店員は常に客空間の中にいなければなりません。
従ってここではかなり優れた販売の技術がある店員でないと売り上げをあげられません。………
(以上の、イラスト&文は、「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋したものです。)
さて、その後、紳士服を専門に販売する大型ディスカウント店や、カジュアル化したビジネスマン向きの商品を扱う専門店などが次々と登場してきたために、百貨店は紳士服販売の中心的な存在ではなくなりました。
現在の百貨店の紳士服売り場は、かつてのような大規模な平場ではなくなりましたが、店舗構造(店員空間のない、接触・引き込み・回遊型店)も接客方法(常連接客)もほとんど30年前と変わらないままだというのが実情です。
今後は、扱い商品が違う繁盛店が行っている「なわばり」を解除した「商品空間」や「客空間」、そして「なわばり」を解除した店員のアクションについての研究が急務となっています。(※「一晩で売れる店に変えられる」参照)
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