5.姿をかくした町の電器屋さん
下のイラストは、1980年代後半頃の、典型的な日本の商店街の風景です。
その頃より少し前までは、日本のどの商店街の電器店もよく目立つ存在の店でした。
蛍光灯が明るく灯り、店の中はラジオ、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの花形商品が並んで、通行客の目を引きつけていました。
しかし、やがて商店街の電器店が目立たなくなりました。
閉店して、電器店の数が減ったから目立たなくなったのではなく、次々と出店してくる新しい店に挟まれて、次第にその存在感が薄くなっていったのです。
(イラストは「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋)
(1)新しくなった電器店は売り上げを伸ばせるか?
………すっかり古くなってしまった電器店がこのところ相次いで改装を始めました。………
………このような店はたいてい「店員空間がある、引き込み・回遊型店」です。ただし店員空間は設定されているものの、店の規模が小さいのと来店客数が少ないために、店員は客空間に出てきて「なわばり」を主張することが多くなります。………
………この店は全体にすっきりとして見通しがいいのですが、このことは引き込み・回遊型の構造としてはあまりよくありません。商品量が少ないために回遊通路の機能が低く、さらに店員からの死角がないためフリー客にとってははいりにくい店です。
また、商品量が少ないことからひやかし安全信号も不十分です。
客がせっかく店内にはいってきても、すぐに商品を見終わってしまうので、なかなか客の滞留時間が長くなりません。
店内に客がいる時間が少ないのでサクラパワーが起きることもなく、店内はいつも閑散としています。………
(イラスト&文は「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋)
(2)現状でもよく売れる電器店
………大型店と小型店を比べるとやはり大型店が有利ですが、小型店でも存在感がありよく健闘している店を観察することができます。………
………こちらは「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」で、店頭にも接触型の商品空間があり、正面が全面オープンになっています。
この店の特徴は、商品量が非常に豊富なことです。
確かに店そのものは狭いのですが、店内をうめつくすような多量の商品からは強いひやかし安全信号が出ています。
この店は、フリー客にとってもはいりやすいので、サクラパワーを起こしやすくなっています。………
(イラスト&文は「続・入りやすい店売れる店」・日本経済新聞社・1988年より抜粋)
これらは、約28年前の全国各地の商店街で、よく見られた電器店の状況です。
大型店が直ぐ近くまで忍び寄り始めた頃の商店街では、振興策や活性化策が活発に行われ、多くの店主たちは店舗をリニューアルして、売れる店への転換に取り組みました。
しかし、「店の構造」が店員やお客様の行動に大きな影響を与えるということに対する理解がなかったために、改装後、お客様を待ち受ける店員の態度や接客を開始するタイミングが店員の「なわばり」主張のアクションとなって、かえってお客様を遠ざけることになった店もたくさん観察されました。
当時は、次々と新しい店が登場してきた時代で、お客様はそれまでよりもずっと自由に店を選べるようになりました。
ところが、そのようなお客様に対して、いったいどのように対応すればよいかがよく分からなかった従来の店の店主は、ますます苦戦を強いられていったのです。
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