53.店の競争が客を「神様」にする
こんにちは。
今日は、「リアルショップあるあるシリーズ(53)」の、
「お客様は、店同士の競争が激しくなればなるほど、「神様」扱いされるのはなぜか?」という話です。
※店が激しい競争状態になればなるほど、お客様は、店員から「上手・うわて」な立場にしてもらえる。
現代でも、たまに使われる「お客様は神様です」という言葉は、1964年に開催された東京オリンピックのテーマソングを歌った人気歌手・三波春夫さんが話したことがきっかけとなって流行したものです。
しかし、当時は、ようやくスーパーマーケットが登場したばかりのころだったので、店にやって来る客は、まだまだ「神様」ではありませんでした。
そのころは、地元の商店街の店の店主が近所の馴染み客を対象にして、近所づきあいの延長としての「お客さん」に対応していた時代です。
やがて、1970年代にコンビニエンスストアが、1980年代に大型専門店やショッピングセンターが登場するにつれて、店の店員は、店主から「社員・パート・アルバイト」が中心となり、客もまた、近所の馴染み客から見知らぬ大勢の客へと大きく変化してゆきました。
このような日本の店の著しい発展を背景にして、見知らぬ大勢の客は、店に繁盛や衰退をもたらす数の力を持った神のような存在となり、販売関係者から「お客様」と呼ばれるようになったのです。
要するに、客が「神様」になったのは、意外と最近のことなのです。
それでは、いったいなぜ、店が激しい競争状態になればなるほど、店員は客を「お客様」や「神様」として大切に扱い、サービスの向上に励むのでしょうか?
それは、店や店員は、コスト最小の生き方に強い影響を受けているからなのです。
一般に、店の数が少なくて、店同士が競争をしていない状況においては、客に対して特別に感じよくすることは、大変エネルギーを消耗することなので、ごくごく普通の接客方法しか行われません。
しかし、店や客の数が増え、店同士が激しい競争状態になって来ると、少しでも多くのお客様を引きつけるためには、たとえ多くの犠牲を払ってでも、感じの良い接客を提供することが必要になりました。
そして、ますます競争が激しくなっていくと、それにつれて、店員は自分自身を「下手・したて」な立場にして、客をできるだけ「上手・うわて」な立場、すなわち「お客様」や「神様」として接客することによって、売り上げを競うようになってきたのです。
「お客様は神様です」という言葉は、初めはリアルショップとは違ったところで使われた言葉でしたが、次第に、リアルショップでお客様を「上手・うわて」な立場にすることのわかりやすい表現として、現在に伝わっています。
このように、お客様を神様にまで押し上げたのは、繁盛店を目指す店員の力ではなく、数多くの店同士のサバイバル競争だったのです。
(この「リアルショップあるある」シリーズの毎回のタイトルは、1995年に単行本、2004年に文庫本、2013年にブログで、「良い店悪い店の法則」として紹介したものです。それを、現在の捉え方でご報告しなおしています。)
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