早くから行列を計画してきた「仙太郎」の「接客コミュニケーション」
この店は、東京の「伊勢丹新宿本店」の地下1階食品フロアにある、和菓子の「仙太郎」です。
京都に本店があり、全国の有名百貨店などに十数店の店舗を出店しています。
この店が多くの客を引きつける理由については、過去に『行列ができる和菓子店「仙太郎」の店舗と接客の秘密』で報告いたしました。…こちらから
さて今回は、その後もずっと、同じ店舗構造と販売方法のまま、行列が途絶えない人気の要因について、この店が早くから採用してきた「ベルトパーテーション」と「行列」と「接客コミュニケーション」」に絞って、報告していきます。
1.この店の立地・・・・・・二つの通路に面した好立地
地下一階・食品フロアの二つの通路に面した角店で、好立地です。
2013年3月16日、「東急東横線」と「東京メトロ副都心線」が相互直通運転を開始し、埼玉方面~横浜が乗り換えなしで結ばれたことにより、「丸の内線」、「副都心線」、「都営新宿線」連絡口から伊勢丹地下1階への来店客が急増したために、この店の立地も、ますますよくなっています。
副都心線側から、地下1階の食品フロアへの客の流れ
2.この店の扱い商品・・・・・・・・朝生和菓子、上生菓子、贈答用品
この店は、朝つくって、その日のうちに食べる朝生(あさなま)和菓子が中心です。ぼたもち、最中、豆大福などの定番商品に加えて、水ようかんや栗の大福など季節の和菓子がケースに並びます。また、日持ちのする贈答用の和菓子類も用意されています。
3.この店の店舗構造・・・・・セルフ販売方式の、店員空間が狭い接触型店
この店は、店の奥にミニ工場を併設していることから、その空間を含めると、「店員空間が広い接触型店」だととらえることもできますが、お客様の目線からは、「店員空間が狭い接触型店」に見えています。
ミニ工場の存在は、商品をこの場でつくっているというできたて感や、手づくり感を高めています。
■「店員空間が狭い接触型店」
■この店の平面図
①青はお客様 ②赤は店員 ③ピンクは商品空間
4.この店の接客方法の特徴は 「セルフ販売方式」
一般に、「店員空間が狭い接触型店」では、お客様が店に来るや否や、買うか買わないかに関係なく、店員が直ぐに接客を開始する「常連接客」が行われます。
そのために、このタイプの店は、買うことが決まっていない客にとっては店全体の「なわばり主張」が強く感じられ、気軽にはひやかすことができない店です。
ところが、この店は、「常連接客」を行うための「店員空間が狭い接触型店」の構造をしていながら、「セルフ販売方式」を採用しており、お客様から注文を受けた後に接客を開始する「一見接客」を行っています。
お客様が少ない時間帯は、お客様を並ばせずに、声がかかった場所で、各店員が接客を開始します。
写真を見ると、この店の左側では数人のお客様が順番を待っていて、注文・包装・精算を行っていますが、同時に右側のコーナーでも、お客様からの注文を受けて接客を行っていることがわかります。
この店の店員は、お客様から声がかからない限り接客をしないので、この店の商品空間は常になわばりが解除されており、店員からの早すぎる接客アプローチを受けることなく、自由に商品を眺めることができます。
5.行列が生み出す「サクラパワー現象」と、強力な「広告効果」
この店ではショーケースの左側にある、ミニ工場の出入り口前に設置されている1台のレジスターで精算作業を行うために、お客様が多い時間帯になると、お客様は左端を先頭にして、ショーケースに沿って行列を作り、順番を待って商品を買います。この時、ショーケースに沿って置かれた「ベルトパーテーション」が、行列を生み出すのに役立っています。
お客様がつくる「行列」は、この店が多くのお客様を引き付ける二つのパワーを発揮します。
(1)サクラパワー現象
一人目のお客様は二人目のお客様を引き付ける「サクラ」となり、さらに多くのお客様を引き付ける強力なパワーを発揮して、「サクラパワー現象」を引き起こします。
(2)広告効果
大勢の通行客が行き交う場所にできた「行列」には、大勢の通行客に対して、「その店が大勢の人気を獲得している店であること」を、強力に訴求する「広告効果」があります。
その「広告効果」は、お客様にその店を強く印象付け、次の機会の購入をうながす大きな力になるのです。
かつての店には存在しなかった「ベルトパーテーション」があるだけで、お客様はこの店が行列をして順番を待って買う店であることを理解します。
一台だけのレジスターで精算するシステムも、この店が行列を生み出すための要因となっています。
順番を待つお客様がつくる行列は、「サクラパワー」を発揮して多くの通行客を引き付けます。
また、それと同時に、大勢の通行客に対して、この店が大勢のお客様に人気があるということを訴求する「広告効果」も獲得します。
6.リアル店舗の店員が提供する「接客コミュニケーション」
地域や家庭や学校や職場でも、対人コミュニケーションを失った現代人は、リアル店舗における店員とのリアルなコミュニケーションを求めています。
現在、大勢のお客様を引き付けているリアル店舗では、お客様に対して必ず店員が様々な「接客コミュニケーション(リアルコミュニケーション)」を提供しています。
本来、「店員空間が狭い接触型店」では、お客様を遠ざけやすい「常連接客」が行われています。
しかし、この店は、「店員空間が狭い接触型店」に、「ベルトパーテーションで仕切った客空間」をつくり、併せて「セルフ販売方式」を採用することによって、従来の接客方法とは全く異なる「一見接客」を行っています。
そして、「一見接客」を行う店員は、「お辞儀」や「案内」や「うなずき」などのリアルなアクションを行うことによって多くのお客様が求める「接客コミュニケーション(リアルコミュニケーション)」を提供しているのです。
(1)行列を誘導する店員のアクション
ベルトパーテーションを用いて、お客様をきちんと案内する店員のアクションは、わかりやすさや安心感を感じさせます。
※案内のアクション(一点注意の動き )
(2)セルフ販売方式が作業中の店員のアクションを生み出す
お客様から注文の声がかかるまでは接客を開始しない「セルフ販売方式」の採用によって、店員は作業に専念することができます。そして、この作業中の店員のアクションは、店全体の「なわばり」を解除して、活気を感じさせます。
※作業中のアクション(機敏の動き )
(3)精算コーナーで精算をする店員のアクション
ていねいにモノの受け渡しをしたり、お辞儀や案内やうなずきをする店員のアクションは、親切さ、ていねいさ、礼儀正しさ、好意などを感じさせます。
※受け取り&手渡しアクション(接近の動き )
※お礼のアクション(接近の動き +協調の動き )
※うなづきアクション(攻撃の動き )
以上のような、リアル店舗の店員が提供する「接客コミュニケーション(リアルコミュニケーション)」こそが、この店の行列を途絶えさせない一番の要因なのです。
なぜならば、現代の多くのお客様は、店員とのリアルなコミュニケーションを求めてリアル店舗にやって来るからです。
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