大勢のお客様を引きつける「ねんりん家」の「接客コミュニケーション」
●「ねんりん家・東京大丸百貨店」
「ねんりん家・東京大丸百貨店」は、すでに、「人の動き」という観点から、この店がなわばりを解除した「店舗構造」と「店員と客のアクション」によって、大勢の客を引きつけているという状況をご紹介しました。以前の記事はこちら。
今回はさらに詳しく、店員の「接客のアクション」が多くの客を引き付ける様子を分析したいと思います。
これからご紹介する、店員がお客様に対して行う様々な「接客」を「接客コミュニケーション」と呼ぶことにします。
お店における接客風景はあまりにも見慣れた光景なので、ごく当たり前の現象のように受け取られていますが、実はそこで行われている様々な店員の「接客アクション」は、お客様をこの店に引き付ける大きな要因になっているのです。
なぜならば、家庭や地域や学校や職場で、急速に失われていったコミュニケーションに対する多くの現代人の潜在的なニーズが、無意識に「リアル店舗」の「接客コミュニケーション」を受け入れてしまうからです。
●「ねんりん家・東京大丸百貨店」平面図
※「赤」は店員、「青」はお客様
この店の構造は「店員空間が狭い接触型店」と「店員空間が広い引き込み型店」の折衷型店舗です。
商品空間は向かって左側の対面販売の商品ケースと、右側の対面販売の商品ケースに分かれています。右側の商品ケースは、ひやかし客が商品を見たり、予約と配送のみの客が伝票を記入したり精算をしたりするのに使われています。
そして、左側の陳列ケースでは、行列をして順番待ちをしていたお客様の注文を聞き取って包装し、精算をします。さらに、店の奥には商品を製造するバームクーヘンのミニ工場があります。
●お客様を引き付ける「接客コミュニケーション」
この店は、「店員空間の狭い接触型店コーナー」と「店員空間が広い引き込み型店コーナー」で構成された店なので、本来は、お客様が注文をする前から接客が開始される「常連接客」が行われる店舗構造になっています。
しかし、この店の場合は、店頭に長い行列が生じる(買うことが決定した客が順番を待っている)ことによって、お客様から注文を受けた後から接客が開始される「一見接客」が行われています。
本来の「一見接客」の店では、精算カウンターにおける「接客コミュニケーション」が主体ですが、行列ができるこの店では、それ以外にも多くの「接客コミュニケーション」を見ることができます。
そして、それらの多くの「接客コミュニケーション」を行う店員のアクションが、さらに次の客を引き付けるパワーを発揮しているのです。
この店全体の店員の主な「接客コミュニケーション」を見てみましょう。
この店の場合、通常は店頭に順番を待つ長い行列が出来ます。
このような順番を待って並ぶお客様の姿やアクションは、強力な「サクラパワー」となって通行客を引き付けます。
そして、商品を案内したり、行列の場所を案内したり、商品を説明したり、注文に応じて包装や精算したりする、店員の「接客コミュニケーション」が店の内外に提供され、多くの通行客を引き付けています。
それぞれの「接客コミュニケーション」を分析していきましょう。
(1)通路に出て呼び込みや行列の案内をする店員の「説明&案内アクション」「手渡しアクション」「挨拶アクション」
この店で一番目立つ店員のアクションは、通路に出て、呼び込んだり行列の案内をしたりする店員の「説明&案内アクション」です。そして他に「手渡しアクション」や「挨拶アクション」も行われています。
※通路に出て呼び込みをする「接客コミュニケーション」
※行列を案内する「接客コミュニケーション」
※案内アクション(一点注意の動き)あるいは(全体注意の動き)
※案内アクション(一点注意の動き)
※説明&案内アクション(一点注意の動き)
※行列のお客様にメニューなどを手渡す「接客コミュニケーション」
※手渡しアクション( 接近の動き)
(2)配送承りケース(カウンター)での店員の「あいづちアクション」「説明&案内アクション」「お礼アクション」
配送承りケース(前面にある商品ケース)では、配送を希望するお客様の注文に対応する「あいづちアクション」や、「説明&案内アクション」「お礼アクション」が行われています。
※配送注文を受ける「接客コミュニケーション」
※挨拶やお礼を言う「接客コミュニケーション」
※あいづちアクション(攻撃の動き)
※あいづちアクション(協調の動き)
※説明&案内アクション(一点注意の動き)
(3)注文承りケースでの店員の「あいづちアクション」「説明&案内アクション」「手渡しアクション」「挨拶&お礼アクション」
店内の注文承りケースでは、順番が来たお客様の注文を聞き取り、包装・精算作業を行うための、「あいづちアクション」や「説明&案内アクション」「手渡しアクション」「挨拶&お礼アクション」を行っています。
※注文を聞き取り、包装して手渡す「接客コミュニケーション」
※挨拶やお礼を言う「接客コミュニケーション
※あいづちアクション(攻撃の動き)
※あいづちアクション(協調の動き)
※説明&案内アクション(一点注意の動き)
●以上が、「ねんりん家・東京大丸百貨店」が、多くのお客様を引き付ける、店員の「接客コミュニケーション」です。
「店」は単なる設備ではありません。
それは、乗組員が力を合わせて動かす宇宙船のようなものです。
多くの客が通行する「道」に、客を引きつけやすい構造の店をつくり、さらに、店員が力を合わせて「接客コミュニケーション」を発信することで、初めて多くのお客様を引きつけることができます。
リアル店舗の「店員」は決して単にモノを売るだけの機械ではありません。
商品を販売するとともに、生身の身体のアクションを通じて、現代のお客様が求めている「接客コミュニケーション」を提供するという重要な役割を果たしているのです。
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