5.役割を終えたアムラックス東京
東京・池袋にある大規模ショールーム「トヨタオートサロン アムラックス東京」は今年12月23日に、閉店します。
1990年に、約70台の車を展示して、誰でも気軽に見たり、触ったり、乗ったり、相談したりできるショールームとしてオープンし、当時は非常にたくさんの客を引きつけました。(2011年度末までに約3600万人集客)
その「アムラックス東京」も、現在、平日は非常に客が少ない状況となり、大型自動車ショールームとしての二十数年間の役割を終えようとしています。
「アムラックス東京」が、当時、大勢の客を引きつけた要因について、また現在の状況を迎えるにいたった背景について、「人の動き」という観点から改めて分析してみましょう。
(1)従来までの自動車ショールーム(店)の店舗構造と接客方法
従来までの自動車ショールーム(店)の店舗構造は、規模の小さい「店員空間がない、引き込み・回遊型店」が主流でした。
商品(自動車)が非常に大きいために、1~2台の車しかディスプレイできない狭いショールーム(店)が多く、客が店に来るや否やすぐに接客を開始する「常連接客」が行われていました。
そのために、客は当時の自動車ショールームを気軽に冷やかすことなどできませんでした。
※店員空間がない、引き込み・回遊型店
※当時は、客が店に入るや否や、すぐに接客を開始する「常連接客」が、入りにくく冷やかしにくいショールームにしていたことを誰も気づきませんでした。
※注文前の「一次接客」から接客を開始する「常連接客」が、多くの客を遠ざけていました。
(2)「アムラックス東京」の店舗構造と接客方法
一方、この店(ショールーム)の店舗構造は、「店員空間がある、引き込み・回遊型店」です。
1990年に、この「アムラックス東京」が登場するまで、日本には「店員空間がある、引き込み・回遊型店」の自動車のショールームは存在していませんでした。
※「店員空間がある、引き込み・回遊型店」
※東京アムラックスは、客が自由に商品を見たり触れたり乗ったりすることができる、当時としては非常に画期的なショールームでした。
※注文後の「二次接客」から接客を開始する「一見接客」が、多くの客を引き付けていました。
客は、従来までの「常連接客」を行うショールームから遠ざかり、「一見接客」を行う「アムラックス東京」にどんどん引きつけられていったのです。
(3)多くの客を引き付けた「アムラックス東京」から客が遠ざかって行った背景
やがて、「アムラックス東京」の成功を受けて、全国に「一見接客」を行う中規模のショールームがたくさん登場してきました。
また、ネットによって誰でも豊富な車の情報を得られるようになったことや、「ウェブショップ」の登場などによって、わざわざ「東京アムラックス」まで来て、体験をしたり情報を収集したりする必要がなくなりました。
さらに、少子化や若者の車離れの影響もあり、「アムラックス東京」は、次第に自動車の情報を発信するという当時の役割を終えていったのです。
「アムラックス東京」が終わりを迎えるということは、それだけ自動車が買いやすくなったとも考えられます。私達は1990年当時にも、この店をご紹介しましたが、店の変化を観察してきた者として、非常に感慨深いものがあります。
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