4.移動客が多い伊勢丹化粧品売り場、少ないヒカリエ化粧品売り場
●現代の客は「移動中」にモノを買う
売れる店をつくるために、最も必要なものは「道」です。
「道」とは、交通の要所と要所をつなぐ通路で、そこに大勢の移動客が通行していることが条件です。
たとえ広くて立派な通路をつくったとしても、そこを通行客が通らなければ「道」とはいえません。
今日の社会で、繁盛店をつくるためには、移動客がたくさん通る道に面していることが重要です。
なぜかというと、現代の客は移動中にモノを買うからです。
忙しい現代の客は、休日にわざわざ目的の店に買い物に出かけるという行為から、普段の日に、仕事や用事などで移動する間に買い物をするという行為に変化しています。
そうした背景を踏まえて、駅ナカや空港や高速道路のサービスエリアなどに、新しい店が続々登場して、多くの移動客を引き付けています。
ファーストフードのドライブスルーはもちろんのこと、クリーニングや預金口座の開設などのドライブスルーなども、移動客を対象にした店なのです。
さて、このような観点から、伊勢丹新宿本店の化粧品売り場と、渋谷にできたヒカリエの化粧品売り場を比べてみましょう。
●伊勢丹新宿本店・化粧品売り場
伊勢丹新宿本店と言えば、百貨店売上NO.1を誇っています。
その1Fにある化粧品フロアはまさに伊勢丹の顔ともいうべき存在ですが、そこが多くの客を集める本当の理由は、実はそこに「道」が存在し、多くの「移動客」が移動していることにあるのです。
伊勢丹本店の化粧品売り場は、1階の正面玄関から向かって左半分に位置しています。
伊勢丹は、店の中ほどにエスカレーターがあり、百貨店に入ってきた客の多くはエスカレーターに向かって移動します。
下の図を見てください。
化粧品売り場(紫色の部分)の近くには、本館パーキング側の入り口と、メンズ館との通路があり、多くの客が出入りしています。
緑色の線は、エスカレーター、エレベーター、正面玄関などに向かう移動客の動きを書いたものです。
伊勢丹の化粧品売り場が多くの客を引き付ける理由は、化粧品売り場の中を、化粧品を買いに来る女性客以外の多くの様々な移動客が通っているということなのです。
※駐車場からエスカレーター方面への通路
※地下鉄入り口そばからエスカレーター方面への通路
※エスカレーター近くの通路
※エスカレーター近くから地下鉄入り口方面
●渋谷ヒカリエ化粧品売り場
一方、渋谷のヒカリエの化粧品売り場を見てみましょう。
こちらの化粧品売り場は、ヒカリエのB1フロア全体を占めています。
ヒカリエ全体の面積が小さいこともあり、このフロアには他の業種の店はほとんどありません。
このフロアには、主な移動通路がないために、化粧品売り場を利用しない客は、単にエスカレーターの周りを回って他のフロアに移動しています。(緑の線の部分)。
つまり、このフロアは、化粧品を買いに来る女性客以外の客は歩いていないため、非常に通行量が少なくなっています。
移動客がいないことにより、それぞれの店の前の通行量も極端に少なっています。そのために、店員のなわばり主張のアクションが強くなり、客が近づきにくい状況が続いてしまいます。
伊勢丹新宿本店の化粧品売り場のように、化粧品を買ったり冷やかしたりする客以外の「移動客」が全くと言っていいほど存在しないために、それぞれの店はなかなか客を獲得することができないのです。
※エスカレーター以外に移動通路がない
※移動客がいない化粧品売り場の通路(1)
※移動客がいない化粧品売り場の通路(2)
●伊勢丹新宿本店・化粧品売り場のような、単なる「移動客」が移動する通路を持たない限り、たとえ同じような店で構成された化粧品売り場であっても、多くの客を引き付けることは難しいのです。
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