かつて、商売に破綻した店主のとる道は、店をたたむか安売り屋になることだった
商売は必ずしもうまく行くとは限りません。
突如競合店が登場して大幅に客が奪われたり、再開発などで通行量が激減したり、さほど立地も悪くないと思えるところに出店したにも関わらず明確な改善策が見つからないままに売り上げがあがらないとかの理由などで、閉店の危機にさらされます。
そして、金融関係からの資金援助が限界に達すると、いよいよ在庫を処分して店をたたまなければいけないところまで追い込まれてしまうのです。
店主はしかたなく在庫の安売りを決意しますが、従来まで通常価格で売ってきた商品を激安価格で販売することには非常に大きな抵抗を感じます。
激安価格で売ったのでは損をするばかりの他に、これまで付き合ってきた取引先などを裏切ることになるからです。
しかし、いよいよどうすることもできなくなると、それまでの付き合いをすべて断ち切って、店主は激安閉店セールに踏み切ります。
普通は、激安価格に引きつけられた客によって在庫品はあっという間に売れてゆき、ほどなく店は閉店になっていきます。
取引先や周囲の同業者達も、特別の事情を察して理解を示し、閉店セールはたいていの場合黙認されて終わってゆくのです。
ところが、たまたま店の立地が良く、規模の大きい店が大量の在庫処分セールを行うと、大変な客の人気を呼んで大繁盛することもありました。
どんどん在庫が売れてゆくうちに、予想外の商品も売れ始め、何とか頑張れば店が持ちこたえられそうになってゆく場合も起きました。
そうすると店主は元気が出てきて、次々と激安用の商品を仕入れては激安販売を続けていったのです。
周囲の同業者からは反感をかったり嫌がらせを受けたりもしましたが、生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれればどんなことにも耐えることができました。
そうこうしているうちに、いったん安売りで大量の商品が売れるということを経験すると、それまで思いもしなかった販売方法やそれに伴う仕入れルートの開発もでき、ディスカウントストアへの道をたどることになったのです。
いまでこそディスカウントストアは一つの販売方法になりましたが、かつては経営が破綻するなどの特殊な事態に追い込まれた店だけが、その状況を打開する手段としてディスカウントストアへと転身していったのです。
私たち人間は普段はできるだけ楽に生きられる方法を選ぼうとします。
しかし、事態が悪化していよいよどうしようもなくなって初めて、それまでは絶対に考えられなかったような方法を受け入れることになるのです。
閉店に追い込まれた店主には、順調に商売をしている人には全く考えられないような、思い切った発想が浮かぶことがあるのです。
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