13.不動の動き
他人とコミュニケーションをするときに、身体をほとんど動かさないのが「不動の動き」です。「不動の動き」を使うということは、これまで説明してきた十二種類の動きの情報を一切出さないということです。
ここでは動画はありません。
「不動の動き」はその場の状況に応じて、「優位アクション」にも「劣位アクション」にも解釈できます。
「不動の動き」をすると、いわゆるポーカーフェイスになり、他人からはその人の喜怒哀楽や性格が読み取りにくくなります。
一般に、偉い人は自分では何もしないで、何でもお付きの人にやらせます。そのため、他人が一生懸命に働いているときに、何もしないでじっとしていることが「優位アクション」だと解釈されることがあります。
一方、軍隊などでは、地位が低い人間は上官の許可がない限りじっと静止していなければなりません。このように自分勝手な動きをしないことが「劣位アクション」と解釈されることもあります。ホテルのドアボーイやガードマンが不動の姿勢をとるのはこうした例です。
「不動の動き」を使うことで成功するのは何といっても勝負の世界でしょう。ポーカーフェイスということばがあるように、「不動の動き」が得意な人はそうでない人に比べて、はるかに自分の手の内を明かさずにすむのです。
このことはスポーツの世界でも同様です。
打たれるたびに内心の動揺が表に現れるピッチャーよりも、まったく動じないように見えるピッチャーの方がはるかに勝負強く、また、どんなに不利な状況になっても平常心でプレイを続けられるゴルファーの方がそうでないゴルファーに比べていい成績を収めるに違いありません。
このように、「不動の動き」が得意なタイプは、他人の影響を受けにくく、マイペースを貫きやすいという利点があります。さらに、スポーツ選手の場合、余計な動きをしないことが、正しいフォームの習得をじゃましないということも考えられます。
しかし、一般に「不動の動き」を多くする人は、コミュニケーションが難しいと思われやすいのです。もしもあなたが「不動の動き」が得意なタイプだとしたら、相手はあなたの気持がよくわからないと感じがちになります。
「不動の動き」が得意な人には、おしゃべりな人も無口な人も存在していますが、おしゃべりな場合でも抑揚が少なく、身ぶり手ぶりが極端に少ないので、相手はあなたが話の内容に対してどのような感情を持っているのかが、なかなか理解しにくいのです。
従って、「不動の動き」をしがちな人は、人間関係においては意識して他の十二種類のアクションを取り入れる必要があります。いちいち面倒だと感じるかもしれませんが、そうすることによってコミュニケーションの失敗が少なくなり、結局はムダなエネルギーを減らすことができるからです。
かつて、ニュースキャスターは身体をできるだけ動かさず、表情も変えずに、ニュースの原稿を淡々と読むのが普通でした。つまり、「不動の動き」を積極的に使っていたのです。その結果、ニュースの内容に余分な個人の情報が加わることはほとんどありませんでしたが、その分だけ、ニュース番組自体の個性やエンターテインメント性は少ないものでした。
しかし、時代は変わり、ニュース番組は次第にそれぞれのキャスターの個性を強く打ち出すようになりました。今日では、視聴者はニュースキャスターが誰であるかによって番組を選ぶようになっていますが、これは言い換えれば、誰のアクションを通じてニュースを聞きたいかということを選択していることになるのです。
テレビやビデオやインターネット上の動画の普及によって、私たちを取り巻く情報社会は、静止画の世界から動画の世界へと移行しています。今後はますます人の動きの情報が重要になってくるに違いありません。
ところが現代社会の人間関係は決してうまくいってはいません。その理由の一つは、私たちがこれまで家庭や学校や地域社会から知らず知らずのうちに学んできた、アクションによるコミュニケーションの技術を失ってしまったからです。アクションを知ることは、必ずコミュニケーションを円滑にするのに役立つはずです。
■役に立つとき
1.ポーカーフェイス
2.平静を装う
3.マイペース
4.従順
5.指示を待つ
6.存在感を減らす
■注意が必要なとき
1.他人への説明
2.自己表現
■13種類の人の動き もくじ
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