ソラマチ商店街(1)
2012年5月22日に開業した「東京スカイツリー」。開業から約5ヵ月が立ちますが、当初の関係者の予想を上回る集客数が続き、いまやすっかり日本を代表する観光名所となっています。
巨大な電波塔である「スカイツリー」もさることながら、その足もとには312店舗(開業時)の大商業施設「東京ソラマチ」が存在しています。
いったいどんな店が出店しているのか?「東京ソラマチ」に客が引き付けられるのはなぜなのか? その店舗と接客を観察してみましょう。
「東京ソラマチ」には様々なエリアがありますが、今回は特徴的な物販エリアの店舗と接客について、その概要をながめてみたいと思います。
■ソラマチ商店街
※各店の分析に関しては、今後も追跡調査を続け、随時修正し更新していきます。
イーストヤード1階に位置する全長約120mの通路に、食品、雑貨、カフェなどの店35店舗が並んでいます。ここは押上駅からスカイツリー本体に向かう通路の役割を果たしている、大変通行量の多い好立地です。この立地に恵まれた「ソラマチ商店街」にはいったいどんな構造の店が出店し、どんな接客をしているのでしょうか?「ソラマチ商店街」の動向は、これからの繁盛店の傾向を探るための大きなヒントを提供してくれそうです。
私達は、店を分析するために、「商品空間」「店員空間」「客空間」の三空間のレイアウトの仕方によって4つの構造に分類しています。
1.接触型店 2.引き込み型店 3.引き込み・回遊型店 4.接触・引き込み・回遊型店
これらの店の構造は、扱い商品、販売方法などと深い関係を持ち、店員(販売員)の接客アクションを左右する非常に大切なものです。35店舗の店を構造によって分類してみるだけでも、大変興味深い事実が見えてきます。
1.接触型店に分類される店
接触型店はあらゆる店舗の基本です。
店の基本である「戸板一枚の店」にもっとも近いのが、この「接触型店」です。
客の通路にそって「商品空間」を配置し、その後ろに店員(販売員)が立つ「店員空間」があります。「客空間」は店の外(通路)に客が自らつくります。
接触型店には、「店員空間が狭い」店と「店員空間が広い」店があります。
■店員空間が狭い接触型店
狭い店員空間に店員(販売員)がじっと立ったり、客が近づくや否や「いらっしゃいませ」と声をかけたりする「客を遠ざけるアクション」が生じやすい構造ですが、いったん客がつくと、サクラパワーが生じて、大勢の客を引き付けることもできます。
■店員空間が広い接触型店
店員空間が広いために、客との距離をとりやすく、なわばり解除がしやすい構造です。また、何かと作業が多いために「客を引き付けるアクション」が生じやすくなります。
●サマンサタバサ アニバーサリー
(ファッション雑貨/カフェ/スイーツ)
㈱サマンサタバサジャパンリミテッド
店員空間が狭い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
この店は、対面販売を行う「店員空間が狭い接触型店」とセルフ販売方式の「店員空間のある、接触・引き込み・回遊型店」の折衷型店舗で、一見わかりにくい店舗構造と販売方法の店になっています。また、それに加えて、喫茶コーナーも併設しています。
売り方の違う店をまとめているために、サクラパワーによる相乗効果を上手く利用するのがむずかしい店になっています。
●みちくさ餅(餅菓子)㈱エフ・エフ・エス
店員空間が狭い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
この店は、イートインのコーナーとテイクアウトのコーナーを併設した店です。テイクアウトのコーナーは、「店員空間が狭い接触型店」の構造で、セルフ販売方式を採用した店になっています。テイクアウトの客は、イートインの客と一緒にレジに行列をつくって購入します。
●俵屋 重吉(おむすび) ㈱京樽
店員空間が狭い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
京樽が出店している新業態のおにぎり専門店です。
向かって右側がおにぎりのショーケースで、その後ろに厨房があります。また、左側には簡単なイートインコーナーがあります。
販売スペースの店員空間は狭いのですが、後ろの厨房で作業する店員(販売員)のアクションが「客寄せ踊り」の役割を果たし、商品のできたて感を感じさせています。また、商品空間の商品量が豊富なために、客が立ち止まって商品を見やすい構造です。イートインに客が入ると、その姿もまた通行客を引きつけます。
●浅草梅園(甘味処) ㈱梅園
店員空間が狭い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
向かって左側がショーケースを使った甘味の物販で、真ん中が喫茶のメニューで、右側が喫茶スペースになっています。左側の対面販売のコーナーは「店員空間が狭い接触型店」なので、通行量が少ない時には、「客を遠ざける店員のアクション」が生じやすい構造になっています。
●リトルチーズガーデン(チーズケーキ/焼菓子) ㈱庫や
店員空間が狭い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
この店は「店員空間が狭い接触型店」です。このタイプは、客を遠ざける店員のアクションが生じやすい構造です。しかし、この店の店員(販売員)は、パネルを使っての呼び込みや、試食サービスを行うことによって、「客寄せ踊り」や「客寄せ音頭」を生み出して、多くの客を引きつけています。
●マリオンクレープ(クレープ) ㈱マリオン
店員空間が広い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
店の構造は「店員空間が広い接触型店」であり、なおかつ、実演をして販売をする店であるために、客を引きつける店員(販売員)のアクションが生じやすい店です。しかし、この店は大勢の客が通行する通路から奥まったところにあるために、せっかくの実演効果を訴求しにくいつくりになっています。
●たこ家道頓堀くくる(たこ焼き)白ハト食品工業㈱
店員空間が広い接触型店・・・東京スカイツリーソラマチ商店街
たこ焼きが美味しいことで有名な大阪のこの店は、焼きたてのたこ焼きを食べさせるイートインのコーナーとテイクアウトのコーナーを併設した店です。テイクアウトのコーナーは、「店員空間が広い接触型店」で、たこ焼きを焼く作業中の店員(販売員)のアクションが多くの客を引きつけています。
2.引き込み型店に分類される店
(ソラマチ商店街にはこの構造の店は存在していません)
「引き込み型店」とは、商品空間を店内に引き込んで、店内に客空間をつくった構造の店です。「引き込み型店」には、「店員空間が狭い」タイプと「店員空間が広い」タイプがあります。
■店員空間が狭い引き込み型店
「店員空間が狭い引き込み型店」は、従来の商店街や、地下街などにある贈答用和洋菓子の店に多く店に見られる構造です。店内に広くつくった客空間であっても、店員空間が狭いために、「客を遠ざける店員のアクション」が生じやすく、通行客が入りにくい店です。
■店員空間が広い引き込み型店
「店員空間が広い引き込み型店」のは、客を引き付ける作業中の店員のアクションが生じやすくなるために、通行客が店内に入りやすい構造です。
※次回は、ソラマチ商店街の「引き込み・回遊型店」「接触・引き込み・回遊型店」を分析します。
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