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2012年10月23日 (火)

2.大人気、東京大丸「お肉の細道」の繁盛を支える店舗と接客

今月、10月1日に、国の重要文化財にも指定されている東京駅の丸の内駅舎が百年前の姿でよみがえり、10月5日には大改装していた大丸東京店がリニューアルオープンしました。大丸の食品フロア「ほっぺタウン」も増床され、食品売り場、特にお弁当売り場が充実し大変話題になっています。
さっそく、魅力的になった最近のデパ地下の店舗構造と店員(販売員)の接客アクションを観察してみましょう。

 

1.「お肉の細道」の立地・・・・東京駅地下通路に面した好立地
「ほっぺタウン」のフロアマップのように、有楽町側の地下通路から百貨店の中へと引き込まれている一角が「お肉の細道」となっています。
大丸東京店地下1階の食品売り場「ほっぺタウン」が増床し、お弁当の店を集めた「お弁当ストリート」が大人気、中でも男性をターゲットにして、肉を中心としたお弁当を集めた「お肉の細道」が大きな話題になっています。

↓ほっぺタウンのフロアマップより
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2.「お肉の細道」の扱い商品
  ・・・・肉を主役にした各種弁当。店内の厨房で製造。

焼肉、ハンバーグ、洋食、韓カルビ、鳥唐揚げ、焼き鳥など、様々な肉を中心とした各種弁当類を販売しています。すべての店が店内に厨房を持っていて、できたてのお弁当を提供することができます。

 

3.「お肉の細道」の店舗構造
  ・・・・奥に厨房がある、店員空間が狭い接触型店。

この一角には有名な店がたくさん出店していますが、今回は以下の7軒の店舗構造と接客を観察することにします。
これらの店の構造は、すべての店の奥に厨房があり、対面販売用のショーケースとオリジナルの陳列棚を利用した「店員空間が狭い接触型店」ですが、よく見ると、それぞれの店の商品空間のつくり方や販売方法には違いがあり、店の個性や扱い商品の特徴などとも深い関係を持っていることがわかります。
すでに、和洋菓子の売り場の分析で、店内に厨房やミニ工場があって、客から作業の様子が見える店は、できたての商品を提供しているというイメージを与えるのに加えて、作業中の店員のアクションとなって、客を引き付けやすいということをご説明しました。
そのように考えると、ここでご紹介する「お肉の細道」の店はすべての店が店内に厨房を持っているので、非常にレベルが高い販売競争を展開していると言えます。

Onokunohosomiti_heimenzu



それでは順番に、それぞれの店の店舗と接客の特徴を見ていきましょう。

 

(1)叙々苑 (東京大丸店)
焼肉で非常に有名な「叙々苑」。焼肉弁当を販売しています。
この店は7店舗の一番端、地下通路から入ってすぐの位置にあります。

Jojoen_heimenzu 

ショーケースは、向かって左側が、焼肉のたれとサラダドレッシング、焼肉ライスバーガー(パッケージ)を陳列したケース、真ん中が焼肉弁当の見本とすでに包装された焼肉弁当の箱の陳列、その隣にレジがあり、一番右側がサラダの冷ケースとなっています。
焼肉弁当は客が自分で手にとって買うシステムですが、店員(販売員)との距離感から考えて、対面販売が行われていると考えられます。

↓対面販売のケース
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厨房は店の奥にあります。通路側からは作業の様子が良く見えますが、ショーケースとの間に柱がある関係で、せっかくのお弁当を製造する店員(販売員)のアクションが客を引き付ける作業中のアクションとして機能しにくくなっています。客から客寄せ踊りとして認識されにくいところが少し残念です。

↓通路から見た叙々苑の厨房。ショーケースの方向からはこのアクションは見えない。
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(2)ミート矢澤(ブラッカウズも同時出店) (東京大丸店)
この「お肉の細道」の中で、一番話題になっているのがこの「ミート矢澤」です。(レジを挟んで、隣に系列店のブラックカウズが出店)。
百貨店初出店ということもありますが、「超高い!」お弁当が販売されたということでTV等で報道されました。この価格が高いことも多くの客の興味を引くポイントになっています。メニューは、一番安いハンバーク弁当で1500円。ハンバーグとサイコロステーキの詰め合わせで3000円前後、ステーキ弁当となると5000円を超え、何かと話題を集めている一番高い「極味弁当」になると、何と9600円もします。
驚いたことにこの店は、弁当としては価格が高いにもかかわらず、多くの客を引き付けています。この店の店舗と接客の秘密を分析してみましょう。

 

実は、今回ご紹介する7店の中で、一番よい立地にあり、販売しやすい構造をしているのがこの「ミート矢澤」なのです。
もう一度、全体図を見てみましょう。
まず、「ミート矢澤」は系列店の「ブラッカウズ」と並んで出店しているために、他店よりもやや店が広くなっています。


Onokunohosomiti_heimenzu_2

さらに、よく見ると、左から2番目にある「ミート矢澤」だけが、角店(かどみせ)の構造になっていることが分かります。すでに角店については、何度もご説明していますが、二本のの通路が交差する角にある店で、一般に通行量が多いことから販売に有利とされています。

Yazawa_heimenzu

この店の有利な状況は、通路側から見た時によく分かります。
左側の厨房とL型になったケースが連動して、客を引きつける店員(販売員)の作業中のアクションがアクションが良く目立ち、活気のある状況を客に提供しています。

↓百貨店の外の通路からでも、この店の活気のある雰囲気がよくわかる。
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さらに、アップにしてみるとこんな感じです。
L型のケースの一部には、大きな肉の塊が見えます。

↓店に近づいたところ。作業中の店員(販売員)のアクションが良く目立つ。
ケースの中には大きな肉の塊が…。

Yazawa2

さて、ケースの中に陳列されているのは、それぞれの弁当の見本(食品サンプル)です。この弁当サンプルには相当な種類があり、非常においしそうに見えるため、強力に客の目を引き付けます。この店では注文を受けてから調理を開始するために、包装済みの弁当は一切陳列されていません。包装済みの弁当は、精算・包装時間を早くするためには非常に効果的ですが、食品の中身が見える部分が少ないために、商品パワーが落ちるという問題点があることも事実なのです。

↓ケースに並ぶ弁当の商品サンプルは非常に美味しそう。
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向かって右側にある「ブラッウズ」でも、注文が入ってから調理が開始されるために、ショーケースの中はおいしそうなサンプルのみが並んでいます。

↓「ブラッカウズ」のショーケース。これも美味しそう。
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さて、客にとって一番見やすいL型ケースの先端に飾られているのは、一番高い「極味弁当9600円」です。

↓よく目立つ極味弁当9,600円
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これはマスコミでも話題の商品なので、特に買うつもりのない多くの人が気軽に近寄って眺めていきます。ケータイで写真を撮って行く人もめずらしくありません。つまり、この9600円の弁当は客に対して「どうぞご自由に見てください。買わなくてもかまいませんよ」という「冷やかし安全信号」を発信しており、この店は店と店員(販売員)のなわばり解除が最大限に訴求されている店だと考えられます。

↓9600円の弁当に客は興味津津。
Yazawa3 

冷やかしでこの弁当をながめる多くの客の姿がサクラパワーとなって、さらに多くの通行客を引き付けることは言うまでもありません。商品をゆっくり眺めて検討した客の一部は、買う客となって行列に参加します。つまり、この店は典型的な対面販売ケースを使用しながらも、セルフ販売方式(客が買うことを決めてから接客を開始する販売方法)を採用しているのです。
また、この店では、できたてを提供するために、客が注文してからつくり始める方式を採用しています。そのため客はどんなにすいている時でも10~20分待たなければならず、その出来上がりを待つ客の姿も、サクラパワーとなって次の客を引き付けます。
まとめると、この店は、

●商品を冷やかす客
●注文するために並ぶ客
●商品の出来上がりを待つ客

によってサクラパワーが生じ、さらなる客を引き付けて、繁盛しているのです。

 

(3)韓カルビ大雲(デウン) (東京大丸店)
この店では、ケース全体がセルフコーナーになっており、客は自分で商品を選んで店員(販売員)に手渡し、精算・包装をしてもらいます。この店でははっきりとしたレジカウンターがないために、客が行列をつくることはありません。一見、セルフ販売方式に見えますが、商品を選ぶ間、店員(販売員)の存在が少し気になるために、セルフ販売方式と対面販売方式の中間くらいの店だと考えられます。
商品空間には出来上がった弁当がたくさん陳列されており、透明のフタを通して美味しそうな弁当の中身が良く見えるため、客にとって魅力を感じやすい店です。

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(4)洋食や三代目たいめいけん (東京大丸店)
ガラスのショーケースではなく、三段の商品陳列棚とレジカウンターからできた店です。客が商品を手にとってレジで精算する方法ですが、商品空間は包装された商品と写真が中心で、見た目の美味しさを訴求するよりも、持ち帰りやすさやすぐに買って帰れるというところに重点を置いた陳列です。

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(5)たまひで からっ鳥(と)  (東京大丸店)
ケースの真ん中にレジカウンターがあり、向かって左側がカラスのショーケース、右側がカレーのパッケージの陳列棚になっています。
この店は、客がガラスのショーケースの中の空揚げのパッケージを見て、どの量の唐揚げを買うかを決定して、レジに並ぶという販売方法を計画していますが、商品空間のつくり方の関係で、店員(販売員)の影響を強く受ける普通の対面販売方式になっています。

↓向かって左側のガラスのショーケース
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 ↓向かって右側の陳列棚
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(6)両国 鳥幸 (東京大丸店)
焼き鳥を並べた対面販売用のショーケースを使い、典型的な対面販売を展開しています。このタイプの店は従来から客を遠ざけやすい店員(販売員)のアクションが生じやすいために、高度な接客技術を必要とします。

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以上、ほとんど同じくらいの限られた空間の中でも、それぞれの店が様々な工夫を凝らして、個性のある店を展開していることがわかります。
ますます魅力的になるデパ地下ですが、今後も変化を追跡していきたいと思います。

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