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2012年9月28日 (金)

行列ができる店の共通点。その店舗と接客の秘密とは?

1.繁盛店の店舗構造と販売方法の関係

これまでに、渋谷ヒカリエと東京大丸にある菓子売り場にある以下の5店の繁盛店を見てきましたが、ここで、これらの店の共通点について考えてみたいと思います。

◆パティスリー・サダハル・アオキ・パリ(東京焼き・実演、マカロン他スイーツ類)
◆ル パン ドゥ ジョエル・ロブション(パン各種)
◆ねんりん家(バームクーヘン)
◆麻布かりんと(かりんと各種)
◆ガトーフェスタ・ハラダ(ラスク)

これらの店は近年登場した、「店の構造」と「販売方法」が従来とはまったく異なる新しいタイプの店です。これらの新しいタイプの店を説明する前に、まず、従来の「店の構造と販売方法の関係」を簡単におさらいしておきましょう。
※個々の構造については「5.外部の人(客)が入りやすい店の構造」をご覧ください。

Matome1_2

ご覧のように、店員空間が狭いか広いかに関わらず、対面販売ケースを利用する「接触型店」と「引き込み型店」では、どちらも「対面販売」が行われていました。
また、店員空間がないタイプの店では、「引き込み・回遊型店」でも「接触・引き込み・回遊型店」でも、店員が客のそばに立って接客する「側面販売」が行われてきました。
そして、店員空間があるタイプの「引き込み・回遊型店」と「接触・引き込み・回遊型店」だけが、セルフ販売方式を採用していたのです。

ところが、今回、ご紹介した店は、店舗の構造に関わらず、すべての店が「セルフ販売方式」を採用しています。
ここで言う「セルフ販売方式」とは、「人の動き」の観点から見た「セルフ販売方式」、すなわち、客が買うことを決定した後に店員の接客を受ける販売方法のことです。
一般に、対面販売のケースを使用している店では、客が近づいただけで接客が開始されます。この時点で、たいていの客はまだ買うことを決定していないので、店員に接客されると「なわばり主張」のアクションだと感じて店から遠ざかります。
これに対して、「セルフ販売方式」を採用している店では、客が店内を回遊して商品を選び、レジカウンターに持って来た時、すなわち買うことが決定した後に接客が開始されます。「セルフ販売方式」は、店にとっては効率が良く、客にとっても非常に買いやすい販売方法なので、スーパーやコンビニや量販店などを中心に採用され、多くの客を引き付けています。

近年、百貨店などの食品売り場でケース販売中心に展開してきた店でも、このような「セルフ販売方式」を取り入れようと、商品空間の一部に「セルフ販売コーナー」を設けた店が目立つようになりました。ところが、実際には、客に「セルフ販売方式」であることが伝わらずに、苦戦している店がほとんどです。
そのような状況の中にあって、ご紹介した5店は、「セルフ販売方式」の導入に成功した店だということができます。それぞれの店がどのような構造になっているのかを見てみましょう。

Matome2

店の種類は様々ですが、従来は「対面販売」しか考えられなかった「接触型店」と「引き込み型店」でも、「セルフ販売方式」の導入に成功した店が登場していることがわかります。
それでは、店の構造はどういう理由で決定されるのでしょうか?
次に、それぞれの店舗の扱い商品と構造の関係を見てみましょう。

Matome3

上の図を見ると、商品の種類が多い店では、
「店員空間がある、引き込み・回遊型店」
「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」
が選択されていることがわかります。これは、商品アイテム数が多い店の場合は、客が買いたい商品を覚えて店員に注文するよりも、自分で商品を選択して、カゴやトレイなどでレジカウンターまで運ぶ方が効率的だからです。
これに対して、商品アイテム数が少ない店の場合には、ケース販売中心の「接触型店」や「引き込み型店」が選択されています。商品アイテムが少ない店では、客が買う商品を簡単に覚えられるので、いきなり並んでも、その場で商品を決定することができるからです。また、広い商品空間に、少ない商品を陳列することによって、商品空間が魅力に欠ける貧弱なものになるのを避けることができます。
それぞれの店の特徴を簡単に説明しましょう。

◆ル パン ドゥ ジョエル・ロブション(パン各種)

Robuchon1 

商品の種類が非常に多いパン店の「ロブション」は、「店員空間がある、引き込み・回遊型店」の構造を採用しています。この店は、典型的な「セルフ販売方式」で、客は店内を自由に回遊し、種類豊富なパンの中から好きなパンを選びトレイに乗せてレジカウンターまで運び、そこで精算を行います。この店が強力に通行客を集める秘密は、主要通路に面したレジカウンターの位置と、客の行列が生み出すサクラパワーを利用した販売方法にあります。
※詳しくは、「7.行列が絶えないパン店の構造の秘密」をご覧ください。

◆麻布かりんと(かりんとう各種)

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この店は、「店員空間の狭い接触型店」をレジカウンターとして使用し、店の半分以上に「セルフ販売コーナー」を設けた店です。50種類ほどの商品アイテム数があり、客が自由に手にとった商品を持ってレジカウンターに行き、精算する方式をとっています。この店も店頭にできた行列をうまく利用することで、通行客を強く引き付けています。
※詳しくは、「9.百貨店菓子フロアでは珍しいセルフ販売の成功例・麻布かりんと」をご覧ください。

◆パティスリー・サダハル・アオキ・パリ(東京焼き・実演、マカロン他スイーツ類)

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この店は、実演場(ミニ工場)と対面型のショーケースを、四角形に配置したかなり大きい店です。一般的には、この規模の店の場合には、この商品アイテム数では、「セルフ販売方式」を採用するにはやや難があります。ところが、この店は実演場の隣にレジを置き、実演商品である「東京焼き」を買う客とその他の商品を買う客を全て、ケースの周りに行列させることで「セルフ販売方式」を実現しています。この行列が、さらに多くの客を引き付ける、強力なサクラパワーを発揮しています。
※詳しくは「6.渋谷ヒカリエで大行列!サダハル・アオキの店舗構造の秘密」をご覧ください。

◆ガトーフェスタ・ハラダ(ラスク)

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この店の場合は、商品アイテム数が非常に少ないため、普通は「セルフ販売方式」を行うことは不可能な店ですが、「店員空間が狭い接触型店」の構造を使って、「セルフ販売方式」の導入に成功した珍しい例です。この店は一見対面販売を行う周囲の「接触型店」に良く似ているように見えますが、実際には、大量の商品を陳列したセルフ販売コーナーを設け、徹底した「セルフ販売方式」を採用しています。そのために、どの店よりも多くの客を引き付け、行列がさらに強力なサクラパワーを生み出しています。
※詳しくは「10.行列が絶えないことで有名な店 ガトーフェスタ・ハラダ」をご覧ください。

◆ねんりん家(バームクーヘン)

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この店も商品アイテム数が非常に少ないにも関わらず、「セルフ販売方式」を採用して成功している店です。店頭で大きな掛け声をかけたり説明をしたり、案内を行う店員(販売員)のアクションが、より一層多くの客を引き付けて、行列が生まれています。
※詳しくは「8.ねんりん家には、なぜ行列ができるのか? 繁盛店の秘密」をご覧ください。

2.客はなぜ行列するのか? 行列のメリットとは何か?

さて、これらの店の繁盛の秘密は、「セルフ販売方式」をうまく取り入れていることでした。そして、どの店にも共通していることは、客を行列させるということです。
今日、狭い店で、効率よくモノを販売するためには、行列をつくることが不可欠です。
ここで、行列のメリットを考えてみましょう。
◆客に行列させる店側のメリット
 
①少ない店員(販売員)で多くの客に対応できる。
 ②長く客を待たせてもトラブルが生じにくい。
 ③いったん並んだ客は途中で逃げることが少ない。
 ④サクラパワーが生じて次々と客を引き付ける。

このように、客を行列させることには、店とって非常に大きなメリットがあります。
しかし、かつての接客の常識には「お客様を並ばせるのは失礼だ」という感覚があり、スーパーやコンビニのように客が自分で商品を選ぶ「セルフ販売方式」の店でない限りは、順番に並ばせるということはあまり行われてきませんでした。
ところが、今日の繁盛店では、客は決して並ぶことを不愉快に感じているようには見えません。行列というと、「長時間待たされる」というデメリットばかりが注目されがちですが、実は客にとっても大きなメリットがあるのです。
行列をすることで得られる客のメリットとはいったいどんなものなのでしょうか?
◆行列をする客のメリット
 
①他の客と順番を争わなくてもよい。
 ②どのくらい待てばいいのかがわかりやすい。
 ③匿名性が守られている。
 ④人気の商品が買える。

客にとって、大勢の客が群がり、順番がはっきりしない売り場で、周りの客と競争して商品を買うのは大きなストレスです。せっかく買うことを決めても、どんどん他の客に割り込まれて、なかなか店員に注文することができない時には、途中で買うのをやめたくなることもあります。
その点、行列なら、並んでいれば必ず商品を買うことができるので、ストレスはぐっと軽減します。さらに、行列の長さを見れば、だいたいの待ち時間が分かるので、あらかじめ並ぶか並ばないかを選択することもできます。
そして一番大切なのは、行列に並ぶということは、すべての客が同じように扱われる、すなわち匿名性が守られることになります。現代の客にとって、匿名性が守られることは非常に重要で、それによって客は自由に好きな商品を買うことができるのです。

かつての商店街中心の時代は、店主(店員)と客が顔見知りであることを前提に、時候の挨拶や世間話を交えた接客が行われてきました。濃密な人間関係を背景にした商店街には、治安が維持されやすいなどの良い点がある反面、客は店主(店員)と親しくなければ有利に買い物をすることができなかったり、自由に好きなものを買えなかったりなど様々な弊害がありました。
そのため客は長い間、自由に買い物ができる環境、すなわち匿名性が得られる店の登場を待望していました。
やがて、経済の発展と都市化の進行とともに、「セルフ販売方式」でモノが買えるスーパーマーケットやコンビニエンスストアが登場し、客は特別な人間関係なしに、自由に買いたいモノを買うことができる環境を手に入れました。
多くの客が、匿名性が守られる販売現場に強く引き付けられたことが、従来の濃密な人間関係を中心とした商店街が衰退した最大の原因なのです。
商店街の衰退に関する「人の動き」という観点からの分析については、改めて詳しくご説明いたします。

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