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2012年9月10日 (月)

渋谷ヒカリエで大行列!「サダハル・アオキ」の店舗と接客の秘密

渋谷ヒカリエは、2012年4月の開業から約5ヵ月たちます。
ヒカリエのB2は、世界初出店、日本初出店、関東初出店、渋谷初出店など、比較的めずらしい和洋菓子と食品のフロアになっていますが、実は、このフロアには飛びぬけて客を集める店が2店存在しています。みなさんお気づきでしょうか?そのうちの1店が、この「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」です。
写真のように、行列が店をぐるりと取り巻き、なかなか途切れることがありません。「30分待ちは当たり前」などと、ツイッターなどでもその混み具合が盛んにつぶやかれているので、ピンと来た方も多いはずです。

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ところで、この渋谷ヒカリエには、日本の三大パティシエが店を出すということで、大きな話題になっていました。その店とは、
鎧塚俊彦「ヨロイヅカファーム(物販)」、
青木定治「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ(物販)」
辻口博啓「ル ショコラ ドゥ アッシュ/ポール・バセット(物販・喫茶)」「フェーブ(物販)」
ですが、集客という観点から言うと、「サダハル・アオキ」が圧倒的な勝利を収めています。
それは、青木氏のお菓子が群を抜いて美味しいからなのでしょうか?
もちろん、青木氏のお菓子は大変美味しいのですが、どの店も、それぞれのパティシエが満を持して渋谷ヒカリエに出店した店なのですから、商品の味や質に圧倒的な差があるとは思えません。むしろ、ここまでの差がつくとは、開業前にはだれも予想していなかったのではないでしょうか。
それではなぜ、ここまでの大差がついたのか?
その答えは、店舗の構造と接客の仕方にあります。
さっそく分析してみましょう。

1.この店の扱い商品
店舗構造と接客と扱い商品は深い関係があります。どういう商品を売るか(商品内容・パッケージなど)ということが、店舗構造や接客方法に非常に強い影響を与えるからです。
この店ではマカロン、エクレア、クッキーなどの商品が販売されていますが、最大の特徴は、三大パティシエの店の中で唯一この店だけが、今川焼風のお菓子「東京焼きマカロンショコラ」と「抹茶クロワッサン」を実演販売していることです。
この実演販売商品は、この店に行列ができる原動力になっています。
ちなみに、「東京焼きマカロンショコラ」は、パリで毎年開催されている世界最大のショコラの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で販売されたものですが、この商品の常設店は現在渋谷ヒカリエだけということで、ネットでも話題にもなり、人気の商品であることはまちがいありません。
 

2.この店の店舗構造
それではこの店の店舗構造を見てみることにしましょう。
この店は、地下1階の化粧品フロアから降りてくる下りのエスカレータのすぐ前の左側にあり、商品ケースと実演コーナーが四角い形に並んだ「店員空間が広い接触型店」です。
「店員空間が広い接触型店」は、客を引き付ける「作業中の店員のアクション」が生じやすく、また、客を遠ざける「早すぎる接客アプローチ」が生じにくい店の構造です。
さらに、実演販売は、百貨店の食品フロアなどでも客を引き付けやすい構造と接客方法といえます。それは店員が常に作業中のアクションを行っていることで、なわばり解除がされやすいと考えられるからです。


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さて、この店の平面図を見てみると、正面左側に「東京焼き」の実演コーナーがあり、そのすぐ右横にレジがあり、セルフのクッキーコーナー、エクレアのケース、マカロンのケースと続き、柱の陰の「抹茶クロワッサン」の実演コーナーはちょうど店の裏側のような印象になっています。
客は店に沿って、レジからぐるりと店を取り囲むように行列をつくり、多い時には店の周りを一周するくらい行列ができます。最後尾には「最後尾」という看板を持った係員が立って客を整理していますが、その姿はますます、この行列を華やかに見せています。
 

3.この店の接客アクション
ところで、この店の接客は非常に変わっています。
扱い商品は、実演商品(東京焼き、抹茶クロワッサン)と他の商品(マカロン、エクレア、クッキーなど)の2種類に分かれますが、どちらも正面の1台のレジで精算する方式をとっているのです。
「レジで精算するのは別に珍しくないのでは?」
「何が変わっているのかよくわからない」
と思われる方がほとんどだと思いますが、みなさんは、
「一番奥のマカロンやその手前のエクレアはどうやって買うのか」
ということが疑問になりませんか?
奥のマカロンコーナーには色とりどりのマカロンが何種類も置かれていて、とても何を何個買うか覚えられそうにありません。並んでいる間に忘れてしまいそうです。エクレアしかり。レジの近くのセルフのクッキーなどは手に持ってレジの店員に渡せばいいので何とかなりそうですが、冷静に考えるとどのように商品を買っているのか非常に不思議です。 

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実は、マカロンを買いたい客はマカロンのケースの前で、エクレアが買いたい客はエクレアのケースの前で店員(販売員)に注文します。
もしも行列が短ければ、客は買いたい商品のケースの前で店員(販売員)に注文したあと、行列の最後に並び、行列が長ければ、まず行列に並んでおいて、買いたい商品の所にさしかかったら店員(販売員)に注文します。
注文を受けた店員(販売員)は客に番号札を渡し、注文されたお菓子を包装して店の中央にあるテーブルに用意しておきます。
そして、会計は正面のレジで!

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つまりこの店では、マカロン(あるいはエクレア)をしか買わない客も、そのまま行列に並んで会計の順番を待ちます。
従って、この店の行列には、
「東京焼きだけを買おうとしている人」
「マカロンやエクレアだけを買おうとしている人」
「両方買おうとしている人」
が一緒に一列に並んでいることになります。
確かに「東京焼き」は大人気ですが、それ以外の客も当然いるはずです。
もしも、「マカロンだけ」「エクレアだけ」の人の会計を店員(販売員)がその場で済ませてしまったら、行列の人数はもっと少なくなるにちがいありません。

 

この店の接客アクションをまとめると、
1.実演中の店員 → 作業中のアクション
2.レジの店員(販売員) → 接客中のアクション
3.店内の店員(販売員) → 接客中のアクションまたは作業中のアクション

ということになり、客を遠ざけるアクション(店内や店頭にじっと立つ、早すぎる接客開始)を行う店員(販売員)は一人も存在しないことになります。店内にはだいたい7~8人の店員(販売員)がいて、全員が客を引き付けるアクション、つまり「客寄せ踊り」を踊っているのですから、大勢の客が引きつけられるのも当然のことといえるでしょう。
 

4.販売方法が生み出した長い行列
このように、この店は、「マカロン3個」しか買わない客でも、「東京焼き」を買う客と一緒に並ばせるシステムをとっていますが、そのことがこの店に行列をつくりだし、また、それを途切れさせない効果を生み出しているとも言えます。
店にいったん行列ができると、その姿は「サクラパワー」となり、次々に新しい客を引き付けるパワーが生じます。たとえ2~3人でも、行列ができている店は、一人も客がいない店に比べてはるかに次の客を引き付けやすくなるのです。
 

5.行列がなければ、なかなか行列は生まれない
ところで、このような人気店は、常に行列ができているのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。この写真は9月のある土曜日の午前中ですが、行列はぜんぜんできていません。

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一般に、店の前の通行量は季節や曜日や時間とともに変化し、天候などにも強い影響を受けます。どんな店でも、時間帯によっては客がまったくいないこともあります。
たとえどんな人気店でも、行列や人だかりがなければ、一般の店と同じようにこれといって目立たない存在です。つまり、人気店の活気や魅力を生み出している最大の要因は、やはり多くの客の姿、すなわちサクラパワーなのです。

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それでは、繁盛店と非繁盛店の違いはいったい何なのでしょうか?
それは、繁盛店は客がいない時間が少なく、それに対して非繁盛店は客がいない時間が長いということです。この店の場合は、やがて通行量が増加すると人がつき始め、2~3人の行列ができると、そこからは店のパワーが急激にアップし、多くの客を引き付けるようになります。
 

実は、店にとって最も大切なのは、客がいない時に店員(販売員)がどのようなアクションをするかということです。客がいないと、店員(販売員)はついついじっと立って客を待つ「なわばり主張」のアクションをしてしまいがちですが、それを続けると客を遠ざけてしまうので、作業中のアクションなどを行うことによって、「なわばり解除」をしておくことが大切なのです。

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