« 2008年7月 | トップページ | 2012年10月 »

2012年9月

2012年9月28日 (金)

行列ができる店の共通点。その店舗と接客の秘密とは?

1.繁盛店の店舗構造と販売方法の関係

これまでに、渋谷ヒカリエと東京大丸にある菓子売り場にある以下の5店の繁盛店を見てきましたが、ここで、これらの店の共通点について考えてみたいと思います。

◆パティスリー・サダハル・アオキ・パリ(東京焼き・実演、マカロン他スイーツ類)
◆ル パン ドゥ ジョエル・ロブション(パン各種)
◆ねんりん家(バームクーヘン)
◆麻布かりんと(かりんと各種)
◆ガトーフェスタ・ハラダ(ラスク)

これらの店は近年登場した、「店の構造」と「販売方法」が従来とはまったく異なる新しいタイプの店です。これらの新しいタイプの店を説明する前に、まず、従来の「店の構造と販売方法の関係」を簡単におさらいしておきましょう。
※個々の構造については「5.外部の人(客)が入りやすい店の構造」をご覧ください。

Matome1_2

ご覧のように、店員空間が狭いか広いかに関わらず、対面販売ケースを利用する「接触型店」と「引き込み型店」では、どちらも「対面販売」が行われていました。
また、店員空間がないタイプの店では、「引き込み・回遊型店」でも「接触・引き込み・回遊型店」でも、店員が客のそばに立って接客する「側面販売」が行われてきました。
そして、店員空間があるタイプの「引き込み・回遊型店」と「接触・引き込み・回遊型店」だけが、セルフ販売方式を採用していたのです。

ところが、今回、ご紹介した店は、店舗の構造に関わらず、すべての店が「セルフ販売方式」を採用しています。
ここで言う「セルフ販売方式」とは、「人の動き」の観点から見た「セルフ販売方式」、すなわち、客が買うことを決定した後に店員の接客を受ける販売方法のことです。
一般に、対面販売のケースを使用している店では、客が近づいただけで接客が開始されます。この時点で、たいていの客はまだ買うことを決定していないので、店員に接客されると「なわばり主張」のアクションだと感じて店から遠ざかります。
これに対して、「セルフ販売方式」を採用している店では、客が店内を回遊して商品を選び、レジカウンターに持って来た時、すなわち買うことが決定した後に接客が開始されます。「セルフ販売方式」は、店にとっては効率が良く、客にとっても非常に買いやすい販売方法なので、スーパーやコンビニや量販店などを中心に採用され、多くの客を引き付けています。

近年、百貨店などの食品売り場でケース販売中心に展開してきた店でも、このような「セルフ販売方式」を取り入れようと、商品空間の一部に「セルフ販売コーナー」を設けた店が目立つようになりました。ところが、実際には、客に「セルフ販売方式」であることが伝わらずに、苦戦している店がほとんどです。
そのような状況の中にあって、ご紹介した5店は、「セルフ販売方式」の導入に成功した店だということができます。それぞれの店がどのような構造になっているのかを見てみましょう。

Matome2

店の種類は様々ですが、従来は「対面販売」しか考えられなかった「接触型店」と「引き込み型店」でも、「セルフ販売方式」の導入に成功した店が登場していることがわかります。
それでは、店の構造はどういう理由で決定されるのでしょうか?
次に、それぞれの店舗の扱い商品と構造の関係を見てみましょう。

Matome3

上の図を見ると、商品の種類が多い店では、
「店員空間がある、引き込み・回遊型店」
「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」
が選択されていることがわかります。これは、商品アイテム数が多い店の場合は、客が買いたい商品を覚えて店員に注文するよりも、自分で商品を選択して、カゴやトレイなどでレジカウンターまで運ぶ方が効率的だからです。
これに対して、商品アイテム数が少ない店の場合には、ケース販売中心の「接触型店」や「引き込み型店」が選択されています。商品アイテムが少ない店では、客が買う商品を簡単に覚えられるので、いきなり並んでも、その場で商品を決定することができるからです。また、広い商品空間に、少ない商品を陳列することによって、商品空間が魅力に欠ける貧弱なものになるのを避けることができます。
それぞれの店の特徴を簡単に説明しましょう。

◆ル パン ドゥ ジョエル・ロブション(パン各種)

Robuchon1 

商品の種類が非常に多いパン店の「ロブション」は、「店員空間がある、引き込み・回遊型店」の構造を採用しています。この店は、典型的な「セルフ販売方式」で、客は店内を自由に回遊し、種類豊富なパンの中から好きなパンを選びトレイに乗せてレジカウンターまで運び、そこで精算を行います。この店が強力に通行客を集める秘密は、主要通路に面したレジカウンターの位置と、客の行列が生み出すサクラパワーを利用した販売方法にあります。
※詳しくは、「7.行列が絶えないパン店の構造の秘密」をご覧ください。

◆麻布かりんと(かりんとう各種)

Azabukarinto01

この店は、「店員空間の狭い接触型店」をレジカウンターとして使用し、店の半分以上に「セルフ販売コーナー」を設けた店です。50種類ほどの商品アイテム数があり、客が自由に手にとった商品を持ってレジカウンターに行き、精算する方式をとっています。この店も店頭にできた行列をうまく利用することで、通行客を強く引き付けています。
※詳しくは、「9.百貨店菓子フロアでは珍しいセルフ販売の成功例・麻布かりんと」をご覧ください。

◆パティスリー・サダハル・アオキ・パリ(東京焼き・実演、マカロン他スイーツ類)

Sadaharu_p1_2

この店は、実演場(ミニ工場)と対面型のショーケースを、四角形に配置したかなり大きい店です。一般的には、この規模の店の場合には、この商品アイテム数では、「セルフ販売方式」を採用するにはやや難があります。ところが、この店は実演場の隣にレジを置き、実演商品である「東京焼き」を買う客とその他の商品を買う客を全て、ケースの周りに行列させることで「セルフ販売方式」を実現しています。この行列が、さらに多くの客を引き付ける、強力なサクラパワーを発揮しています。
※詳しくは「6.渋谷ヒカリエで大行列!サダハル・アオキの店舗構造の秘密」をご覧ください。

◆ガトーフェスタ・ハラダ(ラスク)

Gato_harada01

この店の場合は、商品アイテム数が非常に少ないため、普通は「セルフ販売方式」を行うことは不可能な店ですが、「店員空間が狭い接触型店」の構造を使って、「セルフ販売方式」の導入に成功した珍しい例です。この店は一見対面販売を行う周囲の「接触型店」に良く似ているように見えますが、実際には、大量の商品を陳列したセルフ販売コーナーを設け、徹底した「セルフ販売方式」を採用しています。そのために、どの店よりも多くの客を引き付け、行列がさらに強力なサクラパワーを生み出しています。
※詳しくは「10.行列が絶えないことで有名な店 ガトーフェスタ・ハラダ」をご覧ください。

◆ねんりん家(バームクーヘン)

Nenrinya1

この店も商品アイテム数が非常に少ないにも関わらず、「セルフ販売方式」を採用して成功している店です。店頭で大きな掛け声をかけたり説明をしたり、案内を行う店員(販売員)のアクションが、より一層多くの客を引き付けて、行列が生まれています。
※詳しくは「8.ねんりん家には、なぜ行列ができるのか? 繁盛店の秘密」をご覧ください。

2.客はなぜ行列するのか? 行列のメリットとは何か?

さて、これらの店の繁盛の秘密は、「セルフ販売方式」をうまく取り入れていることでした。そして、どの店にも共通していることは、客を行列させるということです。
今日、狭い店で、効率よくモノを販売するためには、行列をつくることが不可欠です。
ここで、行列のメリットを考えてみましょう。
◆客に行列させる店側のメリット
 
①少ない店員(販売員)で多くの客に対応できる。
 ②長く客を待たせてもトラブルが生じにくい。
 ③いったん並んだ客は途中で逃げることが少ない。
 ④サクラパワーが生じて次々と客を引き付ける。

このように、客を行列させることには、店とって非常に大きなメリットがあります。
しかし、かつての接客の常識には「お客様を並ばせるのは失礼だ」という感覚があり、スーパーやコンビニのように客が自分で商品を選ぶ「セルフ販売方式」の店でない限りは、順番に並ばせるということはあまり行われてきませんでした。
ところが、今日の繁盛店では、客は決して並ぶことを不愉快に感じているようには見えません。行列というと、「長時間待たされる」というデメリットばかりが注目されがちですが、実は客にとっても大きなメリットがあるのです。
行列をすることで得られる客のメリットとはいったいどんなものなのでしょうか?
◆行列をする客のメリット
 
①他の客と順番を争わなくてもよい。
 ②どのくらい待てばいいのかがわかりやすい。
 ③匿名性が守られている。
 ④人気の商品が買える。

客にとって、大勢の客が群がり、順番がはっきりしない売り場で、周りの客と競争して商品を買うのは大きなストレスです。せっかく買うことを決めても、どんどん他の客に割り込まれて、なかなか店員に注文することができない時には、途中で買うのをやめたくなることもあります。
その点、行列なら、並んでいれば必ず商品を買うことができるので、ストレスはぐっと軽減します。さらに、行列の長さを見れば、だいたいの待ち時間が分かるので、あらかじめ並ぶか並ばないかを選択することもできます。
そして一番大切なのは、行列に並ぶということは、すべての客が同じように扱われる、すなわち匿名性が守られることになります。現代の客にとって、匿名性が守られることは非常に重要で、それによって客は自由に好きな商品を買うことができるのです。

かつての商店街中心の時代は、店主(店員)と客が顔見知りであることを前提に、時候の挨拶や世間話を交えた接客が行われてきました。濃密な人間関係を背景にした商店街には、治安が維持されやすいなどの良い点がある反面、客は店主(店員)と親しくなければ有利に買い物をすることができなかったり、自由に好きなものを買えなかったりなど様々な弊害がありました。
そのため客は長い間、自由に買い物ができる環境、すなわち匿名性が得られる店の登場を待望していました。
やがて、経済の発展と都市化の進行とともに、「セルフ販売方式」でモノが買えるスーパーマーケットやコンビニエンスストアが登場し、客は特別な人間関係なしに、自由に買いたいモノを買うことができる環境を手に入れました。
多くの客が、匿名性が守られる販売現場に強く引き付けられたことが、従来の濃密な人間関係を中心とした商店街が衰退した最大の原因なのです。
商店街の衰退に関する「人の動き」という観点からの分析については、改めて詳しくご説明いたします。

Photo_8


人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月26日 (水)

行列が絶えないことで有名な店「ガトーフェスタ・ハラダ」

◆ガトーハラダの最新記事はこちら

みなさんは「ガトーフェスタ・ハラダ」というラスクの店をご存知でしょうか?
フランスパンからつくったガトーラスク「グーテ・デ・ロワ」(王様のおやつ)が大人気で、行列ができることでも大変有名な店です。

本社は群馬県にあり、首都圏では銀座、池袋、新宿の百貨店にしか出店していないことも行列ができる原因かもしれませんが、それにしても、いつも長い行列ができているこの店には、構造上もきっと何か秘密があるに違いありません。さっそく分析してみることにしましょう。


写真の店は、京王百貨店新宿店の中地階の和洋菓子売り場にある「ガトーフェスタ・ハラダ」です。一般に、行列ができる店にはそれなりに納得できる構造が見て取れるものですが、この店は一見、何の変哲もない「接触型店」としか思えません。実際に、近くにはほとんど同じような店が何軒も出店しているのです。

Gato_harada01_2 

多くの販売関係者にとって、この店の売れ行きは大変な驚きで、当然、商品に注目が集まり、この店の商品をヒントにしたたくさんの新商品が生み出されました。その中には、この店の商品よりも美味しいものや、同等の商品もたくさんあるはずなのですが、なかなかこの店ほどの業績を上げる店が登場しないのが現状です。

1.この店の立地・・・・・・出入り口のすぐそばの好立地。角店。
京王百貨店中地下食品売り場の、地下通路からの入り口のすぐ横にある好立地です。2本の主要通路に面した角店で、客は百貨店の外の通路を利用して行列をつくります。

2.この店の扱い商品・・・・・ラスク類
この店の代表商品はフランスパンを材料にしたラスクの「グーテ・デ・ロワ」とその片面にホワイトチョコレートをコーティングした「クーテ・デ・ロワ ホワイトチョコレート」です。それ以外にも焼き菓子などがありますが、大方の客のお目当てはこの二つの商品です。これらの商品は、持ち帰り用のサービス袋に入ったものと、ギフト用の箱・缶入り各種が用意されています。商品空間を見ると、決して色とりどりの華やかなものではなく、意外に地味で、単品を扱っているようなイメージです。

3.この店の店舗構造・・・・セルフ販売方式を行う店員空間が狭い接触型店
この店の大部分は対面型の商品ケースで、混雑時は4台のレジカウンターが稼動しています。右側にセルフ販売方式の陳列棚があります。店の構造としてはたったこれだけで、どうして行列ができるのか、構造上の秘密はなかなかわかりにくいところです。
従来の店の分類から言うと典型的な「店員空間が狭い接触型店」となり、このタイプの店は「客を遠ざける店員のアクション」が生じやすいため、本来はとても接客がむずかしい店なのです。事実、この店とよく似た構造をしている他店では、「客を遠ざける店員のアクション」が生じやすく、なかなか客を引き付けられていないのが現状です。
それではこの店はなぜ、こんなにも多くの客を引き付けることができるのでしょうか?

Gato_harada_heimenzu_2

この店の最大の特徴は、
①セルフ販売の商品を開発し、
②それを「店員空間が狭い接触型店」を使って
③セルフ販売方式で販売している
④清算のために並ぶ客がつくる行列がさらに客を引き付ける

ということです。

これまで、セルフ販売は、コンビニやスーパーのような「店員空間がある、引き込み・回遊型店」や店頭にたくさんの商品を並べたタイプの「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」で行われるのが普通でした。
ところが近年になって、商品量やアイテム数の少ない店であっても、「店員空間の狭い接触型店」の構造で、セルフ販売方式を採用し、そのために生じる行列効果を利用して成功する事例が次々に登場してきました。

Photo_8


人気ブログランキングへ

4.この店の店員と(販売員)客のアクション
この店の店員(販売員)のアクションを見てみましょう。
もう一度、平面図を見てください。

Gato_harada_heimenzu_3

この店はセルフ販売方式を採用しているので、客がベルトパーテーションの内側に並ばない限り接客をしません。店内の店員(販売員)は、コンビニやスーパーの店員(販売員)と同じように、買うことを決めてレジカウンターの前に立った客に対してだけ接客を行います。
Gato_harada02

店の外にいる店員(販売員)は、接客は行わず、呼び込みと客の誘導や整理を行い、空いたレジに次々と客を送り込みますが、これらの店員(販売員)のアクションは、なわばり解除に役立つ「客寄せ踊り」や「客寄せ音頭」として機能しています。
Gato_harada03

また、百貨店の入り口近くにいる別の店員(販売員)は、行列の途中の客にあらかじめ商品メニューを渡したり、セルフ販売用陳列棚の商品を補充・整理したりします。これらの店員(販売員)のアクションも、なわばり解除に役立つ「客寄せ踊り」や「客寄せ音頭」として機能しています。
Gato_harada04 

この店では、行列に並ばない限り接客されないので、客はベルトパーテーションの外から好きなだけ時間をかけて商品を見たり検討したりすることができます。
Gato_harada05_2

そして、買うことが決定したら行列に参加します。
並んでいると順番がきて、商品を買うことができます。
その原理は、コンビニエンスストアやスーパーとまったく変わりありません。
店員の接客を受けずに自由に商品を選び、レジで精算するセルフ販売方式は、客にとっては大変買いやすい販売方法なので、客は店員(販売員)がなわばり主張を繰り返す他の店から遠ざかり、この店に強く引き付けられるのです。


●「ガトーフェスタ・ハラダ」は「第四世代の店」の条件を備えた店

第四世代の店は、見知らぬ客が大勢行き交う「移動空間」に立地して、「第四世代の店の構造」をして、「一見接客」を行うことによって多くの客を引きつけています。
「ガトーフェスタ・ハラダ」も、「移動中に買い物がしたくなる」という人間の基本的な性質を背景にした、「移動客」を対象にした店なのです。


Photo_5

◆関連記事
 行列を作って売る「ガトーフェスタハラダ・京王百貨店・新宿店」の「接客コミュニケーション」。
「ガトーフェスタ・ハラダ」の店員はなぜ感じがいいか?「東京・東武百貨店」

Photo_8


人気ブログランキングへ

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月22日 (土)

百貨店菓子フロアでは珍しいセルフ販売の成功例「麻布かりんと」

前回、東京大丸・ほっぺタウンにある「ねんりん家」の分析を行いましたが、そのすぐ近くに、もう一軒、大変よく売れる店があります。
それが「麻布かりんと」です。
近年、百貨店やショッピングセンターの食品フロアで、従来の対面型のケースの一部にセルフ販売の商品空間を設けた店を見かけるようになりました。ところが実際には、このようなタイプの店で、セルフ販売方式がうまく機能している店はごく少ないのが現状です。その点、この「麻布かりんと」は数少ない成功例の一つだと言えるでしょう。
それでは、なぜ「麻布かりんと」は成功しているのか? さっそく店の構造と店員(販売員)のアクションをチェックすることにしましょう。

Azabukarinto01_3

1.この店の立地・・・・・・出入り口のすぐそばの好立地。角店。
東京駅の大丸百貨店の食品街・ほっぺタウン1階の出入り口のすぐそばという、人が大勢行き交う「移動空間」にあります。
実は、すでに紹介したバームクーヘンの「ねんりん家」の向かい側にあり、2本の主要通路に面した角店(かどみせ)になっています。
 

2.この店の扱い商品・・・・・種類豊富なかりんとう類
この店の扱い商品は様々な種類のかりんとうです。いろいろなかりんとうを、サイズが統一されたカラフルなパッケージで包装することによって、セルフ販売が可能になり、持ち帰り商品としても、また、箱詰にすることでギフト商品としても利用することができます。
さらに、店の一番右側では店内の厨房でつくった「かりんとまん」を販売しています。

3.この店の店舗構造・・・・店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店
この店は大変間口の広い店で、店の左側がセルフ販売方式の商品陳列棚で、右側が対面販売用のショーケースをかねたレジカウンター、一番右に「かりんとまん」専用の窓口があります。

Azabukarinto_heimenzu_2

Photo_7
店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店

この店の売り方は非常に変わっていて、セルフ販売コーナーで商品を選んだ客は、通路側のベルトパーテーションに沿って、「お会計先頭」の表示を頭に一列に並び、順番に精算を行います。そのために通路に沿って常に行列ができやすく、その行列の客の姿がさらに次の客を強く引き付けます。
Azabukarinto02_2

さて、この店の最大の特徴は、試食のコーナーをうまく設け、気軽にセルフで好きな商品を選べるところです。
Azabukarinto03_2
Azabukarinto04_2
Azabukarinto05_2


一般に、客がその店を「セルフ販売方式」だと理解するためには、ある程度の商品量が不可欠です。扱い商品が少ない店は、セルフ販売の商品空間が貧弱になりやすく、基本的にセルフ販売方式を採用することは非常にむずかしいということを理解する必要があります。

 

失敗例の多くは、セルフ販売の商品空間が貧弱なために、
①セルフ販売方式なのか、店員に注文するのかが分かりにくい
②セルフ販売方式の商品空間なのか、単なるディスプレイなのかが分かりにくい

そのために、客はなかなか商品空間で自由に商品を選ぶことができません。
セルフ販売方式を導入するためには、少なくとも、この店ぐらいの商品空間のボリュームと商品の種類が必要なのです。
セルフ販売の商品空間を導入して失敗している例については、いずれまとめてご説明したいと思います。

4.この店の店員(販売員)と客のアクション
それでは、この店の店員(販売員)と客のアクションを見てみましょう。
この店の大きな特徴は、セルフ販売であるにもかかわらず、店頭に店員(販売員)がいて、呼び込みや商品説明を行っていることです。すでに説明したねんりん家と同様に、この店員(販売員)は販売をしないので、本人の存在がこの店の「サクラ」の役割を果たし、前面の通路を歩く客を引きつけます。

Azabukarinto06

この店員(販売員)の呼び込みの声は「客寄せ音頭」に、パネルを掲げるアクションは「客寄せ踊り」として、店員のなわばりを解除し、通行客を引き付ける働きをしています。店の前の通行客は、店員(販売員)のアクションと、商品空間の構造と、商品を選んでいる客の姿に強く引き付けられるため、特に買う気がない客でも気軽に商品に近づき試食することができます。
さらに、店頭で呼び込みや説明をしている店員(販売員)は、セルフ販売の陳列棚で商品を選び終わった客を誘導して精算のための行列をつくる役割も果たしています。

Photo_8


人気ブログランキングへ

●麻布かりんとは「第四世代の店」の条件を備えた店

第四世代の店は、見知らぬ客が大勢行き交う「移動空間」に立地して、「第四世代の店の構造」をして、「一見接客」を行うことによって多くの客を引きつけています。
麻布かりんとも、「移動中に買い物がしたくなる」という人間の基本的な性質を背景にした、「移動客」を対象にした店なのです。


Photo_5

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月19日 (水)

「ねんりん家」には、なぜ行列ができるのか? 店舗と接客の秘密

◆ねんりん家の最新記事はこちら

みなさんは、ねんりん家という店をご存知ですか?
バームクーヘンの専門店で、大変人気があります。

Nenrinya1_2

上の写真の店は、東京大丸・ほっぺタウンにあるねんりん家で、行列が絶えない店としても有名です。もちろん、バームクーヘンは大変美味しいのですが、行列ができる理由は果たして本当にそれだけなのでしょうか?
さっそく、この店の行列の謎に迫ってみることにしましょう。
 

1.この店の立地・・・・・・出入り口のすぐそばの好立地
この店は、大丸の食品街ほっぺタウン1階の東京駅側の出入り口のすぐそばにあります。
従って、見知らぬ客(移動客)を対象にした、「移動空間」に存在する典型的な店と言えます。
店の規模も広く、店の奥には実演工場もあります。
ちなみに、百貨店の出入り口から奥に向かって、ねんりん家、シュガーバターの木、銀のぶどうと3軒の菓子店が並んでいますが、いずれも株式会社グレープストーンという同じ会社が展開しているブランド店です。
 

2.この店の扱い商品・・・・・・バームクーヘン。奥に工場がある。
この店の扱い商品はバームクーヘン2種類だけです。
もちろん包装の量によっていくつかの価格帯はありますが、基本的な商品は2種類のバームクーヘンで、単品販売に近いイメージです。
 

3.この店の店舗構造・・・・・・店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店
この店の構造は「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」としましたが、細かくは「店員空間が狭い接触型店」と「店員空間が広い引き込み型店」の折衷型店舗で、非常に変則的な構造をしています。
商品空間は向かって左側の対面販売の商品ケースと、右側の対面販売の商品ケースに分かれています。右側の商品ケースは、ひやかし客が商品を見たり、予約と配送のみの客が伝票を記入したり精算をしたりするのに使われています。
さらに、店の奥にはバームクーヘン工場があり、商品はこの工場で生産されています。

Nenrinya_heimenzu_2

Zu8_arushk

店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店

4.この店の店員(販売員)と客のアクション
それでは、この店の店員(販売員)と客のアクションを見てみましょう。
この店の大きな特徴は、店頭に店員(販売員)がいて、呼び込みや商品説明を行っていることです。
一般に、店員(販売員)の早すぎる「いらっしゃいませ」は客を遠ざけるアクションになるのですが、この店の場合、この店員(販売員)は単に呼び込みをするだけで販売することがないために、客が遠ざかることはありません。この店員(販売員)の呼び込みの声は「客寄せ音頭」に、パネルを掲げるアクションは「客寄せ踊り」として、通行客を引き付ける働きをしています。
また、この店員(販売員)の大きな役割は、買いたい客を誘導して行列をつくることです。
 
店員(販売員)が「お決まりのお客様から、こちらにお並びください」などと誘導すると、買うことが決定した客は店内の左側の商品ケースに移動します。
そこには3人の店員(販売員)がいて注文を受け、精算・包装を行っています。
 

この時、非常に重要なことは、この店の場合、列に並んだ客はすべて買うことが決定しているということです。だから、店内の店員(販売員)は客をつかまえたり、説得したりして販売する必要がありません。この店は、店員(販売員)が声をかけるタイミングが悪くて客が買わずに帰ってしまうという一般的な物販店で生じやすい失敗が極めて少ない店なのです。
従って、この店の店員(販売員)は、スーパーのレジやコンビニのレジ係のように、ただ、注文を聞いて商品を売るだけで、どんどん売り上げがあがります。
もう一度平面図を見てみましょう。


Nenrinya_heimenzu_3

店内の左側の商品ケースの後ろにいる3人の店員(販売員)は次々に精算・包装作業を行っています。これは、スーパーやコンビニで、レジが3台稼働しているのと同じ状態です。
客は通路に沿ってフォーク並びに一列に並んでいる常態になっており、空いたレジに順番に送り込まれていきます。行列がフォーク並びになる利点は、すべての客が一列に並ぶために、行列の長さが長くなることです。
また、店内のレジで精算する客も横並びになるため、店の外から見ると、三人精算しているだけで、あたかも三人の行列ができているかのようなイメージを与えます。
すでにご説明したように、客を引き付ける最大の要素は「サクラパワー」です。
たとえ三人でも行列ができると、それは次の客を引き付ける非常に大きなパワーを発揮するのです。

Nenrinya3

5.この店が売れる時、売れない時
他の繁盛店の分析でも説明しましたが、曜日や時間帯、また天候などの要因によって、どんな人気店でも必ずまったく客がいない時間帯が存在します。
実は、繁盛店になるために最も重要なことは、客がまったくいない時に店員(販売員)がどのようなアクションをするかということなのです。
この店の場合は、店頭で呼び込みや説明を担当している店員(販売員)と、予約と配送の注文を担当している店員(販売員)が、協力して呼び込みを行っています。

Nenrinya4

すでに説明したように、この店では客が行列に並ばない限り接客を開始しないので、二人の呼び込むアクションと声は「客寄せ踊り」「客寄せ音頭」として機能し、通行量の増加に伴って行列が発生します。そして、いったん行列ができると、「サクラパワー」が生じてさらに多くの通行客を引き付けるので、次第に行列が絶えない店になっていくのです。


どうぞワンクリックをお願いします。

人気ブログランキングへ


 

まとめると、この店の繁盛の仕組みは、

1.大勢の見知らぬ客が行き交う「移動空間」に立地していること
2.セルフ販売を行うための、「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」
  の
構造をしていること
3.注文後に接客を開始する「一見接客」が行われていること


Photo_5

◆関連記事
大勢のお客様を引きつける「ねんりん家」の「接客コミュニケーション」
この店が多くのお客様を引きつける秘密を、店員のアクションから、さらに詳細に分析しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月15日 (土)

行列が絶えない「ル・パン ドゥ ロブション」の店舗と接客の秘密

続いて、渋谷ヒカリエのスィーツ売り場で、連日多くの客を引きつける店を分析してみましょう。
その店は「ル パン ドゥ ジョエル・ロブション」です。
フレンチレストランのロブションが新業態として出店したパンの専門店で、パン店なのに、混雑時は入場制限がでるほどの大人気です。
それはパンの味が他店に比べてはるかに美味しいからなのでしょうか?
それとも、この店の構造に何か秘密がかくされているのでしょうか?
さっそく分析してみましょう。


Robuchon1

1.「ル・パン ドゥ ロブション」の立地・・・・・・入り口わきの好立地

ヒカリエはB2フロアがスイーツ売り場になっているのですが、アーバンコア(地下3F~地上4Fの部分にある地下空間)から続くB2の出入り口すぐにある好立地です。

2.「ル・パン ドゥ ロブション」の扱い商品・・・・・・種類豊富なパン。

ロブションのレストランで出しているパンや、ヒカリエオリジナルのパンなどが豊富に陳列されています。

3.「ル・パン ドゥ ロブション」の店舗構造・・・・・店員空間がある、引き込み・回遊型店

ちょっと見ると、ごく普通のセルフ方式のパン店に見えます。
回遊型の商品空間に美味しそうなパンをたくさん並べ、客はトレイに好きなパンを載せて精算するところは、一般的なセルフ方式のパン店と代わりありません。

Photo_34    

ところが、この店は、精算カウンターが前面の通路に沿って設置された特徴的な構造を持っています。そのため、この店でパンを買った客は精算のため前面の通路に沿って並ぶことになります。
つまり、前面の通路に沿って必ず行列ができる!
この行列は、この店が強烈に通行客を引き付ける大きな原動力になっています。


Robuchon2_3

4.「ル・パン ドゥ ロブション」の店員(販売員)と客のアクション・・・客を引き付けるアクション+行列

一般的なパン店では、レジカウンターは店の中にあるのが普通です。従って、客は店内に並ぶことになり、店内にサクラパワーを生み出します。
ところがこの店の場合は、店が狭いために、店内にレジカウンターをつくってしまうと、回遊客と精算を待つ客の収拾がつかなくなるために、精算を待つ客をあえて店の外に並ばせるという構造をつくりました。しかも、一般的なパン店の場合、レジを3台開ければ、行列は3列に分かれるのでさほど長くならないのが普通です。
ところがこの店の場合は、前面の通路に沿ってレジカウンターをつくっているために、客を3列に並ばせることができないため、客は通路に沿ってフォーク並び状態になっています。つまり、レジが3台開いている時でも、常に長い行列ができやすい状態になっているのです。
人目につくところに行列ができやすいこの店は、いったん行列ができると、強力なサクラパワーを発揮して、通行客をどんどん引き付けていきます。

Robuchon3

●「ル・パン ドゥ ロブション」は「第四世代の店」の条件を備えた店

第四世代の店は、見知らぬ客が大勢行き交う「移動空間」に立地して、「第四世代の店の構造」をして、「一見接客」を行うことによって多くの客を引きつけています。
「ル・パン ドゥ ロブション」も、「移動中に買い物がしたくなる」という人間の基本的な性質を背景にした、「移動客」を対象にした店なのです。


Photo_5

Photo_8


人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月10日 (月)

渋谷ヒカリエで大行列!「サダハル・アオキ」の店舗と接客の秘密

渋谷ヒカリエは、2012年4月の開業から約5ヵ月たちます。
ヒカリエのB2は、世界初出店、日本初出店、関東初出店、渋谷初出店など、比較的めずらしい和洋菓子と食品のフロアになっていますが、実は、このフロアには飛びぬけて客を集める店が2店存在しています。みなさんお気づきでしょうか?そのうちの1店が、この「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」です。
写真のように、行列が店をぐるりと取り巻き、なかなか途切れることがありません。「30分待ちは当たり前」などと、ツイッターなどでもその混み具合が盛んにつぶやかれているので、ピンと来た方も多いはずです。

Sadaharu_p1

ところで、この渋谷ヒカリエには、日本の三大パティシエが店を出すということで、大きな話題になっていました。その店とは、
鎧塚俊彦「ヨロイヅカファーム(物販)」、
青木定治「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ(物販)」
辻口博啓「ル ショコラ ドゥ アッシュ/ポール・バセット(物販・喫茶)」「フェーブ(物販)」
ですが、集客という観点から言うと、「サダハル・アオキ」が圧倒的な勝利を収めています。
それは、青木氏のお菓子が群を抜いて美味しいからなのでしょうか?
もちろん、青木氏のお菓子は大変美味しいのですが、どの店も、それぞれのパティシエが満を持して渋谷ヒカリエに出店した店なのですから、商品の味や質に圧倒的な差があるとは思えません。むしろ、ここまでの差がつくとは、開業前にはだれも予想していなかったのではないでしょうか。
それではなぜ、ここまでの大差がついたのか?
その答えは、店舗の構造と接客の仕方にあります。
さっそく分析してみましょう。

1.この店の扱い商品
店舗構造と接客と扱い商品は深い関係があります。どういう商品を売るか(商品内容・パッケージなど)ということが、店舗構造や接客方法に非常に強い影響を与えるからです。
この店ではマカロン、エクレア、クッキーなどの商品が販売されていますが、最大の特徴は、三大パティシエの店の中で唯一この店だけが、今川焼風のお菓子「東京焼きマカロンショコラ」と「抹茶クロワッサン」を実演販売していることです。
この実演販売商品は、この店に行列ができる原動力になっています。
ちなみに、「東京焼きマカロンショコラ」は、パリで毎年開催されている世界最大のショコラの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で販売されたものですが、この商品の常設店は現在渋谷ヒカリエだけということで、ネットでも話題にもなり、人気の商品であることはまちがいありません。
 

2.この店の店舗構造
それではこの店の店舗構造を見てみることにしましょう。
この店は、地下1階の化粧品フロアから降りてくる下りのエスカレータのすぐ前の左側にあり、商品ケースと実演コーナーが四角い形に並んだ「店員空間が広い接触型店」です。
「店員空間が広い接触型店」は、客を引き付ける「作業中の店員のアクション」が生じやすく、また、客を遠ざける「早すぎる接客アプローチ」が生じにくい店の構造です。
さらに、実演販売は、百貨店の食品フロアなどでも客を引き付けやすい構造と接客方法といえます。それは店員が常に作業中のアクションを行っていることで、なわばり解除がされやすいと考えられるからです。


Sadaharu_heimenzu1   

さて、この店の平面図を見てみると、正面左側に「東京焼き」の実演コーナーがあり、そのすぐ右横にレジがあり、セルフのクッキーコーナー、エクレアのケース、マカロンのケースと続き、柱の陰の「抹茶クロワッサン」の実演コーナーはちょうど店の裏側のような印象になっています。
客は店に沿って、レジからぐるりと店を取り囲むように行列をつくり、多い時には店の周りを一周するくらい行列ができます。最後尾には「最後尾」という看板を持った係員が立って客を整理していますが、その姿はますます、この行列を華やかに見せています。
 

3.この店の接客アクション
ところで、この店の接客は非常に変わっています。
扱い商品は、実演商品(東京焼き、抹茶クロワッサン)と他の商品(マカロン、エクレア、クッキーなど)の2種類に分かれますが、どちらも正面の1台のレジで精算する方式をとっているのです。
「レジで精算するのは別に珍しくないのでは?」
「何が変わっているのかよくわからない」
と思われる方がほとんどだと思いますが、みなさんは、
「一番奥のマカロンやその手前のエクレアはどうやって買うのか」
ということが疑問になりませんか?
奥のマカロンコーナーには色とりどりのマカロンが何種類も置かれていて、とても何を何個買うか覚えられそうにありません。並んでいる間に忘れてしまいそうです。エクレアしかり。レジの近くのセルフのクッキーなどは手に持ってレジの店員に渡せばいいので何とかなりそうですが、冷静に考えるとどのように商品を買っているのか非常に不思議です。 

Sadaharu_p2 Sadaharu_p3
実は、マカロンを買いたい客はマカロンのケースの前で、エクレアが買いたい客はエクレアのケースの前で店員(販売員)に注文します。
もしも行列が短ければ、客は買いたい商品のケースの前で店員(販売員)に注文したあと、行列の最後に並び、行列が長ければ、まず行列に並んでおいて、買いたい商品の所にさしかかったら店員(販売員)に注文します。
注文を受けた店員(販売員)は客に番号札を渡し、注文されたお菓子を包装して店の中央にあるテーブルに用意しておきます。
そして、会計は正面のレジで!

Sadaharu_p4
つまりこの店では、マカロン(あるいはエクレア)をしか買わない客も、そのまま行列に並んで会計の順番を待ちます。
従って、この店の行列には、
「東京焼きだけを買おうとしている人」
「マカロンやエクレアだけを買おうとしている人」
「両方買おうとしている人」
が一緒に一列に並んでいることになります。
確かに「東京焼き」は大人気ですが、それ以外の客も当然いるはずです。
もしも、「マカロンだけ」「エクレアだけ」の人の会計を店員(販売員)がその場で済ませてしまったら、行列の人数はもっと少なくなるにちがいありません。

 

この店の接客アクションをまとめると、
1.実演中の店員 → 作業中のアクション
2.レジの店員(販売員) → 接客中のアクション
3.店内の店員(販売員) → 接客中のアクションまたは作業中のアクション

ということになり、客を遠ざけるアクション(店内や店頭にじっと立つ、早すぎる接客開始)を行う店員(販売員)は一人も存在しないことになります。店内にはだいたい7~8人の店員(販売員)がいて、全員が客を引き付けるアクション、つまり「客寄せ踊り」を踊っているのですから、大勢の客が引きつけられるのも当然のことといえるでしょう。
 

4.販売方法が生み出した長い行列
このように、この店は、「マカロン3個」しか買わない客でも、「東京焼き」を買う客と一緒に並ばせるシステムをとっていますが、そのことがこの店に行列をつくりだし、また、それを途切れさせない効果を生み出しているとも言えます。
店にいったん行列ができると、その姿は「サクラパワー」となり、次々に新しい客を引き付けるパワーが生じます。たとえ2~3人でも、行列ができている店は、一人も客がいない店に比べてはるかに次の客を引き付けやすくなるのです。
 

5.行列がなければ、なかなか行列は生まれない
ところで、このような人気店は、常に行列ができているのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。この写真は9月のある土曜日の午前中ですが、行列はぜんぜんできていません。

Sadaharu_p5
一般に、店の前の通行量は季節や曜日や時間とともに変化し、天候などにも強い影響を受けます。どんな店でも、時間帯によっては客がまったくいないこともあります。
たとえどんな人気店でも、行列や人だかりがなければ、一般の店と同じようにこれといって目立たない存在です。つまり、人気店の活気や魅力を生み出している最大の要因は、やはり多くの客の姿、すなわちサクラパワーなのです。

Photo_8


人気ブログランキングへ


それでは、繁盛店と非繁盛店の違いはいったい何なのでしょうか?
それは、繁盛店は客がいない時間が少なく、それに対して非繁盛店は客がいない時間が長いということです。この店の場合は、やがて通行量が増加すると人がつき始め、2~3人の行列ができると、そこからは店のパワーが急激にアップし、多くの客を引き付けるようになります。
 

実は、店にとって最も大切なのは、客がいない時に店員(販売員)がどのようなアクションをするかということです。客がいないと、店員(販売員)はついついじっと立って客を待つ「なわばり主張」のアクションをしてしまいがちですが、それを続けると客を遠ざけてしまうので、作業中のアクションなどを行うことによって、「なわばり解除」をしておくことが大切なのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 7日 (金)

5.外部の人(客)が入りやすい店舗と接客

この記事は
1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店
2.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その1
3.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その2

4.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その3
の続きです。

(1)現代の店に蘇った「戸板一枚の店の法則」

前回は「なわばり感覚がはたらく『戸板一枚の店』の法則」をご紹介しました。
いつの時代にも、「戸板一枚の店の法則」は客を引き付ける基本原理です。
ただし、この「戸板一枚の店の法則」は、戦後の商店街全盛の時代には、しばらくその姿を消していました。商店街全盛時代には、地元の常連客と地域に密着した店主(店員)が濃密な人間関係を背景にした商売を行っていたために、人間が本来持っているなわばり感覚を生かした「戸板一枚の店の法則」は残念ながら無視されていたのです。

やがて、日本経済の著しい発展に伴い、都市開発が進み駅や道路が整備され、一方で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの新しい店が登場すると、それまで商店街を利用していた客は、こぞってそれらの店に移動してしまいました。
スーパーやコンビニは確かに便利ですが、それまで濃密な人間関係を持っていたはずの客が、急激に商店街を離れて新しい店に行ってしまったのはいったいなぜなのでしょうか?
それは、実は多くの客が従来の商店街の人間関係に息苦しさを感じていて、もっと自由に買い物をしたいという強い欲求を持っていたからだと考えられます。
人の動きという観点からみると、濃密な人間関係が存在しない新しい店には「戸板一枚の店の法則」が生きていて、本来、客が望んでいた見知らぬ者同士のコミュニケーションが行われたために、多くの客を引き付けたのです。
現代においても、繁盛店を観察・分析すると、「戸板一枚の店の法則」をうまく生かしていることがわかります。つまり、客を引き付ける店員のアクションと客を引き付ける客のアクションが生じやすい店舗構造の店が、現実に多くの客を引き付けて、繁盛店になっているのです。

Toita_hensen


2.三空間による店の4分類

ところで、客を引き付ける店員のアクションと客を引き付ける客のアクションが生じやすい店舗構造の店を持った店が繁盛店になると言いましたが、みなさんは、店の構造には違いがあるということにお気づきでしょうか?
販売関係者の方なら、対面販売の店、側面販売の店、セルフ販売方式の店などのように、店には販売商品によって様々な違いがあることをご存じだと思います。
しかし、ここでは、すでに説明した「戸板一枚の店」を原点に、「商品空間」、「店員空間」、「客空間」という三空間による店の分類を考えていきたいと思います。
この分類は、扱い商品や店の規模によって分けるのではなく、
そこで店員と客がどのように動くか、すなわち「人の動き」を基準にしています。
念のため、三空間をおさらいしておきましょう。


3kukan

1.商品空間
商品を陳列してあるところです。店の構造や販売方法によって陳列方法は様々ですが、単なるディスプレイではなく、商品を販売していることが客にきちんと認識される必要があります。

2.店員空間
店員(販売員)がいるところで、接客したり作業をしたりします。店の構造によって、店員(販売員)の居場所がはっきりしている場合と、客空間と重複している場合があります。店員空間をどのようにつくるかということは、人の動きを左右する大変重要な要素です。

3.客空間
客が商品を見たり検討したりするところです。店の構造によって、店内につくられている場合と、店の外の通路を利用する場合があります。先客の姿は次の客を引き付ける強い刺激になるので、客空間をどのようにするかも繁盛店を生み出すための大きなポイントになります。

この三空間がどのように配置されているかによって、店は次のような4つのタイプ(詳しくは8つ)に分類することができます。

3kukan_4bunrui 

1.接触型店(店員空間が狭い)


Zu1_semais P1_semais 

    
まずは、もっともシンプルな「店員空間が狭い接触型店」を見てみましょう。
デパートの地下食品売り場などでよく見られる、ケース販売を中心とした店がこれにあたります。「接触型店」はすでに説明した「戸板一枚の店」を色濃く継承している店で、店の原点ともいえる構造です。

2.接触型店(店員空間が広い)


Zu2_hirois P2_hirois 

次に「店員空間が広い接触型店」を紹介します。
これは、先ほどの接触型店が大型になったもので、店の間口が広く奥行が深い場合や、柱を取り巻いてぐるりとケースを配置したものなど様々なレイアウトがあります。
このタイプの店は、「店員空間」が広いために店員(販売員)が客から離れることができるので、客が「商品空間」に近づいても店員(販売員)からのプレッシャーを感じにくく、客を引き付けやすい構造と言えます。
1985年ころには、この構造の店が非常に高い売り上げを上げていました。しかし、このような店は百貨店や駅ビルのワンフロアに1店か2店しか展開できず、また、この構造で成功するためは多くの商品アイテムが必要で、人気に陰りが出ると坪効率が下がりやすいなど多くの問題点があり、現代では次第に少なくなってきています。

3.引き込み型店(店員空間が狭い)


Zu3_semaih I3_semaih_2    
次に「店員空間が狭い引き込み型店」をご紹介します。
これは、「商品空間」を店の中に引き込んで、店内に「客空間」をつくった構造です。
かつての商店街の肉屋、時計店、薬局・薬店などによく見られた店で、店内に商品空間として陳列ケースを置いているのが普通です。商品の劣化を防ぎ、店員の居住性を高めるために入り口を閉めている店が多く、目的買いの客でなければ入りにくい店でした。
かつての駅ビルや百貨店の贈答用和洋菓子店や、有名ブランドの宝飾店などにこのような店(入り口は開いている)がありましたが、冷やかし客を引き付けることはむずかしい店でした。

4.引き込み型店(店員空間が広い)


Zu4_hiroih I4_hiroih_4

     
次に、「店員空間が広い引き込み型店」をご紹介します。
これは、先ほどの「店員空間が狭い引き込み型店」が大型になったもので、店の間口が広く、奥行も深くなり、店内のケースなどは様々なレイアウトがあります。
このタイプの店は、外から見ると入りにくいイメージがしますが、いったん入ってしまうと、店員空間が広いためにあまり店員(販売員)が気にならず、ゆっくり商品を選ぶことができる店もたくさんあり、路面店で比較的大型の和洋菓子店などに見られるタイプです。
ただし、店員(販売員)があまり積極的に接客すると、客が落ち着いて商品を見ることができなくなるので、接客に注意が必要です。

5.引き込み・回遊型店(店員空間がない)


Zu5_naihk I5_naihk
        
    
次に、「店員空間がない、引き込み・回遊型店」をご紹介します。
「引き込み・回遊型店」とは、店頭に商品空間を置かず、店内に回遊型の「商品空間」と「客空間」を用意している店です。
「引き込み・回遊型店」の場合、店員空間があるかないかで、その店の性格はまったく異なります。「店員空間がない」タイプの店は、「店員空間」と「客空間」が重なっているために、店員はいわゆる「側面販売」を行います。

「店員空間がない、引き込み・回遊型店」は、かつての商店街の雑貨店、ファッション店などによく見られた構造で、入り口を締め切った店がたくさん存在していました。このような店は、店内の構造や商品をあらかじめ知らない客にとっては非常に入りにくいイメージがします。
近年でも、このようなタイプの店は地下街などでたくさん見ることができます。
このタイプの店は、店員(販売員)の存在が良く目立つため、接客アクションがむずかしい店です。

6.引き込み・回遊型店(店員空間がある)


Zu6_aruhk  P6_aruhk 

次に、「店員空間がある、引き込み・回遊型店」をご紹介します。
「引き込み・回遊型店」とは、店頭に「商品空間」を置かず、店内に回遊型の「商品空間」と「客空間」を用意している店です。
「店員空間がある」タイプの店は、店内に明確なレジカウンター(店員空間)がつくられていることが多く、いわゆる「セルフ販売方式」を行います。

典型的な例はコンビニエンスストアです。コンビニエンスストアの場合、店頭は閉め切られていることが多いのですが、「セルフ販売方式」なので、店内に入っても接客されないので、客にとっては入りやすい構造と言えます。
一般の店の場合に、この構造で成功するためには、商品空間の広さとつくり方が非常に重要です。商品が少なすぎたり商品空間が狭すぎたりすると、客が「セルフ販売方式」であることを認識できないことがあるので、注意が必要です。

7.接触・引き込み・回遊型店(店員空間がない)


Zu7_naishk_2 P7_naishk
     
次に、「店員空間がない、接触・引き込み・回遊型店」をご紹介します。
「接触・引き込み・回遊型店」とは、店頭に「商品空間」を置き、店内に回遊型の「商品空間」と「客空間」を用意している店です。
「接触・引き込み・回遊型店」の場合も、「店員空間」があるかないかで、その店の性格はまったく異なります。「店員空間がない」タイプの店は、「店員空間」と「客空間」が重なっているために、店員(販売員)はいわゆる「側面販売」を行います。
「店員空間がない、接触・引き込み・回遊型店」は、かつての商店街の雑貨店、ファッション店などによく見られた構造で、店頭にたくさんの商品を陳列して客を引き付けることを目的としています。
このような構造の店の場合、店員(販売員)が店頭の商品空間の近くに立って客を待ちかまえると、客が商品空間に近づきにくくなることが多いので注意が必要です。

8.接触・引き込み・回遊型店(店員空間がある)

Zu8_arushk P8_arushk
    

次に、「店員空間がある、接触・引き込み・回遊型店」をご紹介します。
「接触・引き込み・回遊型店」とは、店頭に「商品空間」を置き、店内に回遊型の「商品空間」と「客空間」を用意している店です。
「店員空間がある」タイプの店は、店内に明確なレジカウンター(店員空間)がつくられていることが多く、いわゆる「セルフ販売方式」を行います。

Photo_8


人気ブログランキングへ


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 6日 (木)

4.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その3

この記事は
1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店
2.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その1
3.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その2
の続きです。

(1)店舗の基本となる3空間 

リアル店舗を観察すると、どんな店であっても、必ず次の三つの空間から成り立っていることがわかります。それは、
1.商品空間(商品を置いてある場所。「戸板1枚の店」の場合は「戸板」がこれにあたる)
2.店員空間(店員がいる場所。「戸板1枚の店」の場合は「戸板の後」がこれにあたる)
3.客空間(客が商品を見たり買ったりする場所。「戸板1枚の店」の場合は「戸板の前」がこれにあたる)
という3つの空間です。
この3つの空間をどのようにレイアウトするかによって、客を引き付けやすい店にすることもできれば、客を遠ざけやすい店にしてしまうこともあるのです。

3kukan

(2)戸板一枚の店の店員(販売員)と客のアクションの法則

 

次に、戸板1枚の店で起きる店員(販売員)と客の様々なアクションの法則を説明します。
ここでみなさんに問題です。イラスト①を見てください。
この店に近づいてきた客に対して、店員(販売員)が何か言ったら、客が遠ざかってしまいました。
さて、店員(販売員)はいったい何と言ったのでしょうか?


    イラスト①↓
Toita1_2

せっかく店に近づいてきた客が遠ざかるのだから、何か失礼なことを言ったに違いない。
そう思った人も多いはずです。例えば、
「買う気がないなら触らないでくださいよ!」
「お客さん、お金あるの?」とか…。

 

残念! 違っています。

 

この時、店員(販売員)が言ったことばは、実は、「いらっしゃいませ」だったのです。
セルフ販売の店が一般的になった現在では、客はあまり接客を望んでいないと考えられるようになりましたが、それでも、店員(販売員)が客に「いらっしゃいませ」を言うと客が遠ざかるということをきちんと理解している人はごくわずかです。
もちろん、初めから商品を買うつもりの客は店員(販売員)から「いらっしゃいませ」と言われても逃げたりしません。早く接客してくれることが、良い結果をもたらすこともあります。
しかし、大多数の「買うか買わないかわからないが、ちょっと商品を見てみたい」と感じている客は、店員(販売員)の「いらっしゃいませ」に反応して、その場を立ち去ってしまいます。
これは、すでにご説明した人間が動物として持っているなわばりの感覚と深く関係しており、無意識のうちに、「店員(先住者)」のなわばり(店)に侵入しようとしている「客」が、「店員(販売員)」から警告を受けたように感じてしまうためです。
つまり、このような、早すぎる「いらっしゃいませ」は「なわばり主張」のアクションなのです。

戸板一枚の店の法則1
早すぎる「いらっしゃいませ」は客を遠ざける

 

それではイラスト②はいかがでしょうか?
店員(販売員)が店頭でじっと立って客待ちをしています。
店員(販売員)のセリフは「いらっしゃいませ」です。

    イラスト②↓
Toita2

この店員(販売員)は店の前に陣取って、まるで商品を守るように立っているのですから、イラスト①の店員(販売員)のアクションと比べても、なお一層、客が店に近づきにくくなっているのがわかります。
戸板一枚の店の法則2
店頭にじっと立って「いらっしゃいませ」を言うアクションは客を遠ざける。

 

続いてイラスト③を見てください。
店にはすでに先客がいて、店員(販売員)は接客アクションをしています。

    イラスト③↓

Toita3

みなさんは、「先客がいる店は待たされるからイヤだ」と思いますか?
もしも、今すぐ注文したいと思っていたら、待たされるのはイヤかもしれませんが、まだ、買うか買わないかはっきりしていない場合には、実は、先客の存在は客にとって大変有利なのです。
なぜ、先客の存在が有利なのか?
まず、先客がいるおかげで、すぐに接客されることがありません。
店員(販売員)が先客に関わり合っている間は、自由に商品を見たり検討したりすることができますし、また、検討した結果、買う気がなければ、そのまま買わずに帰ることもできるのです。
次に、先客の存在は、次のような情報を伝えます。
その店には何かいいものがある。
その店は安全である。
接客中の店員(販売員)と買い物をしている客の姿は、このような情報を提供しているので、このようなアクションが行われている店は、次の客を引き付けやすい状態になっています。

戸板一枚の店の法則3
接客中の店員(販売員)と客のアクションは客を引き付ける。

 

続いて、イラスト④を見てください。
客が店に近づいてきたにもかかわらず、店員(販売員)は何か作業をしています。


    イラスト④↓
Toita4_2

みなさんはこんなふうに思いませんか?
「何をぐずぐずしているんだ! 早く接客しないと、お客が逃げてしまう!」
残念でした。
まだ、買うか買わないかがはっきりしていない大部分の客にとって、店員(販売員)が何らかのアクションをしている店は非常に近づきやすい店なのです。
なぜなら、店員(販売員)が作業に気を取られている間は接客されないので、自由に商品を見たり検討したりすることができるからです。

戸板一枚の店の法則4
作業中の店員(販売員)のアクションは客を引き付ける。


続いて、イラスト⑤をご覧ください。
店員(販売員)は接客に追われて忙しく作業しており、そのまわりに大勢の客が集まっています。

    イラスト⑤↓

Toita5     

このように、店にたくさんの客が集まっている状態を「サクラパワー現象」と呼びます。店に何人か客がつくと、それは「サクラパワー現象」を引き起こし、さらに強い力で次々と客を引き付けていきます。
こうなると、店員(販売員)はひたすら接客と作業を繰り返すので、客を遠ざける店員のアクションをすることがなくなり、客を引き付けるよい循環が続きます。

戸板一枚の店の法則5
サクラパワーは客を引き付ける。

 

このように、客ができるだけ店にいる時間を長くし、「サクラパワー現象」を生じさせておくことが、繁盛店をつくるための大切なポイントなのです。
実は、こうした店員(販売員)と客のアクションは店舗構造と非常に深い関係があります。

Photo_8


人気ブログランキングへ
続きはこちら
外部の人(客)が入りやすい店舗と接客

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 5日 (水)

3.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その2

この記事は
1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店
2.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その1

の続きです。

(1)「戸板1枚」の店とは何か? 

ところで、みなさんは「戸板一枚」ということばをご存知でしょうか?
戸板とは日本家屋の雨戸のことで、サイズは高さ約180cm、幅約90cmです。
通行量の多い道路に、商品を並べた戸板を一枚置き、その後に売り手が座ると「店」になります。江戸から明治にかけての市では、一店分のスペースとして戸板一枚(またはむしろ一枚)が使われるようになりました。店を作るのもたたむのも簡単な戸板一枚の店は、今日の店の原型だったのです。
そして大勢の客で賑わった、いわゆる戦後の闇市も、戸板一枚分のブースで割り振られた店で構成されていました。その後の日本の経済の目を見張る復興は、焼け跡に生まれた、戸板一枚の店からスタートしたと言っても決して過言ではないはずです。 実はこの戸板一枚の構造の店と戸板一枚を挟んで行われた様々なやり取りの中に、今日の繁盛店の構造
の秘密や有効な接客のヒントがたくさん隠されているのです。

 

Ichi_no_mise1_5 

(2)戸板一枚の店と対人距離の関係

 

「戸板一枚」(180cm~90cm)をはさんでの売り買いでは、売り手と買い手が戸板の距離をうまく使ってコミュニケーションをしたのです。90cm幅の戸板にお互いが身を乗り出せば、二人の間の距離は約45cm。また、お互いが戸板をはさんで自然に立つとその幅は約120cm。それ以上の距離を買い手が保とうと思えば、戸板の端(120~360cm)に移動します。また売り手が通り過ぎる人に声をかける場合は、戸板2枚の距離(360~720cm)になります。
このように戸板一枚は、見知らぬ同士の売り手と買い手が、それぞれの目的を達成するために、お互いが戸板の距離をうまく使ってやり取りした、大変便利なコミュニケーションの道具だったのです。


Toita_kozo


この「戸板一枚」の店の距離感は、アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールが分類した人間同士の四つの距離に見事に符合しています。
1.密接距離(0~45cm)
2.固体距離(45~120cm)
3.社会距離(120~360cm)
4.公衆距離(360~720cm)

Photo_8


人気ブログランキングへ
続きはこちら
なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その3

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その1

この記事は
1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店
の続きです。

(1)現代人にもある「なわばり感覚」

 

動物になわばりがあるように、人間にもなわばりが存在しています。
現代人にもこの「なわばり感覚」は生きていて、例えば、新幹線の座席の真ん中の手すりをどちらが使うかが非常に気になったり、隣の席の同僚が自分の机の方にまで書類を押し出してくると不快に感じたりするのは「なわばり感覚」の影響です。

ところで、この「なわばり感覚」は「店」にとって非常に重要なものです。
なぜなら、客が店に入りにくい最大の原因は、店員が自分のなわばりを守ろうとするところから生じているからなのです。
販売関係者の多くは、「店の主役はお客様」だと思い込んでいるため、なかなかそのことに気づきませんが、実際にその構造を眺めてみると、
店は店員(販売員)のなわばり以外の何ものでもありません。
なわばりの先住者である店員(販売員)は、店を見回り、管理し、守っています。

その店(なわばり)に侵入してくるのが、外部から来た客なのですから、
客の立場は非常に弱いということがわかります。
客はそっと様子をうかがい、店員(販売員)が攻撃してこないことがわかれば、店(店員のなわばり)に近づいていきますが、店員(販売員)が攻撃態勢をとっていたり、攻撃をしかけてきたりするとなかなか近づくことができません。

みなさん、もう、おわかりでしょうか?
もしも、あなたの店の店員(販売員)が、客が店(店員のなわばり)に入って来ないようにしっかりとガードを固めていたら、当然、業績はあがりません。
店員(販売員)が「この店は自分のなわばりだから入って来るな!」
と客にアピールする行為を「なわばり主張」と呼ぶことにします。

一方、店員(販売員)が「この店は自分のなわばりではありません。どうぞ自由に入って下さい」と客にアピールする行為を「なわばり解除」と呼ぶことにします。

つまり、売れる店をつくるためには、店員(販売員)が常に「なわばり解除」していることが非常に大切なのです。
どうすれば、「なわばり主張」になり、どうすれば「なわばり解除」をすることができるのかについては後述します。



(2)店は「外部」と「内部」を結ぶ特別な空間

さて、もう一つ、見方を変えてみると、店は「外部」と「内部」を結ぶ特別な空間、すなわち、境界であると考えることができます。
「店」の起源は「市」ですが、「市」とはもともと、山と里、陸と海などの異なる共同体同士が接するところで生じ、様々な品物が交換されてきました。
初期の市は、生活必需品を手に入れる場所ではなく、余剰品を交換しながら見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しむ場だったと言われています。


Photo



現代でも、リアルショップ(店)での買い物は私達の気分を高揚させてくれます。
それは私達が店に行くと擬似的な「境界」を感じ、そこで、スリルのある見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しむことができるからだと考えられます。
このように、リアルショップ(店)の楽しみは、単に商品を手に入れるだけでなく、見知らぬ人(店員)と客とのコミュニケーションにあるので、今後、ますますウェッブサイトなどが発展しても、なくなることはないと思われます。

Photo_8


人気ブログランキングへ


続きはこちら

なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 4日 (火)

1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店

みなさんは、繁盛店をつくるポイントは何だと思いますか?
「人気商品・品揃え」「立地・規模」「接客・オペレーション」など様々な要素が考えられると思います。しかし、ここには決定的な要素が欠けているのです。
それは、「人の動き」を基本にした店づくりの考え方です。
リアルショップ(店)は人間(店員)と人間(客)がコミュニケーションをするための装置なので、その性能の良し悪しによって業績が大きく左右されます。

それでは、

「店」の性能とは何か?
「入りやすい店」とはどういうものなのか?

この問題を解決するためには、とりあえず「人の動き」を基本にした3つの考え方を理解する必要があります。初めての方はぜひ、「入りやすい店をつくる3つのポイント」をご覧ください。
ポイント1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店
ポイント2.なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」の法則
ポイント3.外部の人(客)が入りやすい店の構造

今回は、ポイント1.「人の動き」の観点から見た売れる店と売れない店についてご説明いたします。
ここに2店の店があります。
片方の店を「まるとらショップ」、もう一方の店を「まるねこショップ」とします。
「まるとらショップ」の店長は、自分の店と隣の「まるねこショップ」の業績差に頭を抱えていました。ほとんど同じ立地に、同じくらいの店を出し、よく似た商品を販売しているにもかかわらず、隣の店は行列が絶えないのに、自分の店にはたまにしか客がやって来ないのです。

店長としては何とか手を打たなければならないところですが、商品や店舗設計は本部の意向が強いのでどうすることもできず、仕方なく、最近モチベーションが下がり気味の店員(販売員)たちに、「きちんと立ってお客様を待つこと」「もっと笑顔で、積極的にお客様に声をかけること」を厳しく教育しました。ところがこれといった結果は出ず、ますます2店の業績差は広がるばかりなのです。

         まるとらショップ↓

Marutora_2

 

          まるねこショップ↓

Maruneko_2

この差はいったいどこにあるのでしょうか?
私達は、それは「店員と客のアクション」にあると考えています。
なぜなら、リアルショップで客を引き付ける最大の要因は「人の動き」だからです。
あなたは、行列ができている店を見たら興味をひかれませんか?
まず、人がたくさん集まっていること自体が大きな情報になるはずです。

大勢の人が並んでいると、
1.そこには何かいいものがある。そこは安全である。
2.何を売っているか気になりチェックしたくなる。
3.自分も並ぶ(または、人気店として情報をインプットする)


一方、客がだれもいない店の場合はどうでしょう。

店員(販売員)だけで客は誰もいないと、
1.そこには特にいいものはない。そこは安全かどうかわからない。
2.何を売っているか気にならず、特にチェックしいと思わない。
3.店に近づかない(または、特に店の情報をインプットしない)

このように、客は他の客がどのような行動をとっているかによって、大きく行動を変化させます。従って、客のアクションをどのようにコントロールするかが繁盛店を生み出す大きなカギになっているのです。

Photo_8


人気ブログランキングへ



それでは、客のアクションをコントロールするにはどうすればいいのでしょうか?
そのために必要なのは、
①客を引き付ける店員のアクション(接客)

②それを生み出しやすい店舗構造

この二つです。
この、客のアクションをコントロールする二つのノウハウ理解し実践すれば、売れるリアルショップをつくることができます。

続きはこちら
なわばり感覚がはたらく「戸板一枚の店」 その1

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年7月 | トップページ | 2012年10月 »